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ひつじが読書の邪魔をする・・・

ひつじがいっぴき、ひつじがにひき、ひつじがさんびき・・・

と眠れないときには羊を数えるとよい、と言いますが、私は身体が水平になった途端「寝てしまう」ので(いや、水平にならずとも立っていても寝てしまうときが・・・)、ヒツジは不要です。

さて、少し時間が取れたので図書館で本を借りたのは以前も書いた通り。
うち1冊は「ドイツ人がアイルランドを舞台にドイツ語で書いた動物ミステリー」の翻訳。
レオニー・スヴァンの『ひつじ探偵団』(原著 Glennkill)。2007年に早川書房が出版したミステリーです。

いわゆる「コージーもの」だと思いますが、これが2005年、06年にドイツで評判となって売れたミステリーだった、と訳者あとがきで紹介されています。作者のスヴァンは英文学の博士号をとっているそうで、そのタイトルが「われわれの目でみるだけでいいのか?-近代文学における動物の意識」だとか!私は彼女の博士論文が翻訳されるほうがいいんだけどなあー。とっても興味深いですよねえ・・・。

これは背表紙のタイトルに惹かれて手に取り、楽に読めそうだなあ、と思って借りたのですが、ヒツジが出てくるからか、ページが進まない。
つまらないのではなく(といっても、特にこったナゾ解きでもないのだけれど)、これは多分、ヒツジがわんさかと、人格ではなくひつじ格(個性)をもって登場するからだろうと思うのだけど、まさに「ひつじがいっぴき、ひつじがにひき・・・」状態で、3ページが進めばよい、って感じで・・・。

で、今朝、ようやく読み終えました!
すごくおもしろかった!
アイルランドという、今、イギリスがのEU離脱を前にまさに旬な国(刊行当時はよもやEUを印象付ける国となると予定ではなかったでしょうが)の田園地帯が舞台。といっても、私には、イギリスの田園風景との「違い」は「ゲール語」で語る人物がいる(といっても翻訳の文体が変わるわけではない)だの、巨大な石の下が先史時代の巨石墳(ドルメン)だの(←巨石墳のフリガナとして1度ドルメンとつけ、以後、ずっと「ドルメン」と書くので、最初私は「ドルメンってなに?」と思わず辞書を引いてしまったほど)ぐらいで、正直、これがスコットランドだったとしても、気が付かずに読んだと思われるのだけど、それでも、読み終わってみると、アイルランドの話だったんだなあーと。
ケルト文化、精霊、ゴッドの意味が通じない羊たち(司祭が「ゴッド」を連発するので、彼の名前をゴッドと思い込むほど)・・・。キリスト教における「羊」の意味を当の本人、もとい当の羊たちがわかっていないというのは、殺されてしまった飼い主が無神論者で、彼が羊たちに読み聞かせていた物語はなんとロマンス小説で・・・。羊たちはその小説の筋もちゃんと覚えていて、飼い主が殺されたときも、その小説になぞらえて状況を確認してみたり。

と同時に、男性でもロマンス小説を読むのか!と驚いちゃった私です。

そして、一般に、一匹の迷える子羊を大切にするのが神様だ、なわけですが、羊って一匹だと生きていけないのだ、という常識を打ち破る伝説の羊がいたり。最初から登場する羊たちは放牧されていたのではなく、サーカスで芸をさせられていた黒羊オテロ(シェークスピアですね!)は途中で加わった羊。加わったことでオテロは人生、もとい羊生が変わったようなものだというのを回想シーンを織り込んだり。物覚えがよいけど鳥目の鯨のモップルがいたり。羊のリーダー「サー・リッチフィールド」にはまるで「放蕩息子の帰還」のような双子がいたり。神を知らない羊たちの言動は、まるで新約聖書を読んでいるような気分(笑)。

謎を解く羊は「ミス・メイプル」。アガサ・クリスティの「ミス・マープル」を踏まえています。

最後、すべてが解決するほんの手前、ある人物が羊たちへ行った読み聞かせは「嵐が丘」の。
お金の単位が「ユーロ」というところでやっぱりグレートブリテンの話じゃないんだ!と。

この小説が本当にドイツで流行ったのか、ちょっと眉唾な気持ちでもありますが、あとがきによれば2005年から6年にかけてよく売れたという。

ページをめくると面白いのだけど、めくればめくるほどほど眠くなる(笑)。そういう小説でした。

by eastwind-335 | 2019-02-22 21:31 | Books | Trackback | Comments(0)

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