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ああ、なるほど!と膝を打つ

目から鱗
腑に落ちる
膝を打つ

という本は何冊もあります。そして、そういう本を読むと、本来の内容以上のことも、ピピピ・・・と来ることがあります。
1人「オースティン祭り」状態であったワタクシ。『高慢と偏見』を読み直そうか、と思いながら本屋を歩いていたら、本屋に『おだまりローズ!』という本が平積みになっていました。面白そうなタイトルですよね!しかも実在の人物の話ときたら・・・。
図書館で借りようと検索をしたものの、ふと冷静になってみると、「ハードカバーの本を読む暇は今の私にはない!」と。で、その翻訳者の名前をクリックすると、図書館には2冊の新書が入っていることが判明。

ああ、なるほど!と膝を打つ_a0094449_2040696.jpgその一冊は、イギリス人の階級意識を歴史的に、文学史的に読み取る『階級にとりつかれた人びと 英国ミドル・クラスの生活と意見』(中公新書)。もう13年も前の本です。

これが、すごく面白いのです!読み始めた翌日から、実は通勤時の朝刊を読むのをやめ、行きも帰りもこの本に夢中!(ああ、新聞がたまっていく!)
「オースティン」のために借りたつもりでしたが、読み進めていくうちに、「へえ!」「なーるほど!」「あー、そうだったのね」ということばかり。そんなに英文学作品を読んだわけではない私ですが、既読の小説はもちろん、その作家の他の作品に描かれる作品の紹介を通して、階級問題が19世紀から20世紀へと、どう質的変容を遂げたのかがわかりました。

そして、ミドルクラスにもアッパーとロウアーがあるということ。ロウアー・ミドルクラスの存在がいかにイングランドの中で問題視され、嘲笑の対象となったか。あの小説も、あのミュージカルも、あれもこれも、そういう意味があったのか!と。

特に第一次大戦前後以降の階級問題のくだりを読み、はた、と気が付きました。
「あ、『刑事フォイル』の事件の背景ってこういうところにもあるのかも!」って。事件での中心人物の描かれ方って、多くの場合、単に第二次世界大戦を背景にしているだけでなく、当時のロウアー・ミドル・クラスの人たちのイギリスに対する考え方でもあるのかも!って。実はフォイルも一つの事件だけじゃなくて、大小の事件が結果として解決の糸口になっていく、という粗筋が多い。その中で、どのクラスにもスポットライトが当たるような筋書になっている回が多くて、ゆえに「あの頃、イギリス人は・・・」と描けるんだなあ、とは思っていたのですけれど。ミドルクラスの上下関係は気が付かなかった!
この本を読みなおすと、ドラマで描かれていたと私が思い込んでいるいわゆる悪人の、または悪人への考え方もまた違った視点で見直せるかも、と思わずにはいられません。

階層の中でのみ使う単語があるとは思ったけれど、上品ぶったつもりの単語が実は間違いとか。私は「要するに「ぞうきん」に「お」を付けちゃうようなもんかしら?」と思ったのですが、表記の仕方自体が違うらしく・・・。
お恥ずかしながら、そのロウアー・ミドルのひとがつい使っちゃうっていう単語自体「え?これって日本語だとアレなんだ」と英和辞典を引く有様。

ああ、英語ができたら、セリフ一つにももっといろんなコトを含めているんだってわかるんでしょうね~。外国語ができる人って羨ましいな~。英文学もこういうことも学ぶ学問だって、高校時代に知ってたら、英文科受験したのに(←だから、私のあの英語力では合格できないって)。
そういう細かい点が活かされているかどうかは私は知る由もありませんが、私は翻訳家の努力と苦労によってイギリス文学を読んで「クスっ」と笑うこともあるわけです。翻訳家のみなさま、ありがとうございます。

この本の一番残念だったのは、モンティーパイソンに対する言及がなかったこと。
まあ、2001年に出た本だし。ミドルクラスの話だから、やっぱり、そうよね、ミスタービーンが良い例なんでしょうね。

ちょっと「おおー」と声を上げたのは、近年。私も好きで何冊も読んだ(しかし読みきれない!)ジーブスが、この本の中で「ロウアー・ミドルクラスの代表的近侍」として登場!そこには「日本では知られてないが」という但し書き付き!

まだジーブスの翻訳が出てない時にこの新書を読んでも、私みたいなのは「はあ、そうですか」で終わっていたはず。
本の出会いって、やっぱりあるんだろうな、と思う。
そして、読み返しで出会い直すことも。

ああ、やっぱり本を読むのは止められない。小説だろうと、仕事で使うから我慢できる「字ばっかりの本」(え?)も。

同じ作者の新書、もう一冊借りてきたのです。これはオースティン論みたい。来週中に読めるといいな。あ、でも朝刊も読みたいし・・・。
Commented by ハスカップ at 2014-10-11 23:05 x
ときどきサッカー関連の記事を読みに、お邪魔している者です。他に新井潤美さんの著書には、平凡社新書より、「不機嫌なメアリー・ポピンズ」というのが出ています。こちらは小説以外に、映画の中で階級が、どう表現されているのかが解説されています。もし宜しければ、こちらもどうぞ。
Commented by eastwind-335 at 2014-10-13 19:55
ハスカップさん、はじめまして。
コメントありがとうございます。ハスカップさんもサッカーがお好きなのですね!ドイツのファンでいらっしゃるのでしょうか?それともバイヤン?日本代表でしょうか?
新井潤美さんの著書のご紹介をありがとうございました。今日、ちょっと長めに電車に乗る用事があったので、『自負と偏見のイギリス文化』を一気に読んでしまいました。
ということで、近いうちに、ご紹介いただいた『不機嫌なメアリーポピンズ』を図書館で借りようと思います。
新井さんの本は2冊読んだだけですが、小説だけでなく、映像でどう描かれるのかな?と、海外ドラマ好きな私はこの2冊を読み進めた時点でも気になっていたところです。
ああ、セリフにも階級差が分かるちょっとした単語がちりばめてあるのでしょうね。発声の仕方については、これまでも思うところはありましたが、英語が苦手なのを理由に、なーんとなく思ってた、って感じでして(笑)。
また読み終わったら記事にしますので、どうぞこれからもよろしくお願いします。
by eastwind-335 | 2014-10-10 20:43 | Books | Trackback | Comments(2)

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