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おかあさんだって誰かの子供だった

欠礼葉書を準備する頃となりました。
今年は祖母が亡くなったので、欠礼の準備をしなければなりません。
うちの祖母は密葬を強く希望しており、しかも最初は両親だけで荼毘に付すようにと申しつけていたそうですが、両親が弟一家と私たち夫婦だけ呼んでくれました。
私は初孫だったこともあり、祖母には厳しく、厳しく、そして愛情をもって接してもらったのでした。
まだ小学校1年生の時、一人で祖父母の家に泊まりに行った(東京から広島までは道中はやはり帰省する叔母に連れて帰ってもらいました)折、台所から食卓までの廊下(子供には長かった!)でお醤油を少しこぼしてしまったことがあります。
いそいで雑巾を取りに行ったところ、祖母が「お盆を使わないで運ぶからです!」とお説教を始めました。祖父が間に立ってくれたので割と早くに解放されたような記憶があります。その頃、私達は小さな社宅に暮らしていて、お盆でモノを運ぶ必要はありませんでした(少なくとも小学校1年生のお手伝いの範囲では)。これが父方の祖母だと「すぐに拭きに来て偉い」になるのですが、母方の祖母からすると「こぼしたこと」、その行為自体が許されないことだったのです。
お手伝いをしたからといって、不始末をきちんとしたからといって、褒められるわけではないのだ、というのも、子供心にかなり印象に残ったことでした。かといって、私はこの一件で祖母が嫌いになることもなかったので、相性が良かったのでしょう。映画が好きで、外国ドラマも好きで(そのあたりは母、私と血をひいてます)、手先が器用で(これは私にはない才能)、低学年の頃の冬の写真に私はよく手編みのパンタロンスーツで写っているのですが、それは祖母が大人のデザインを子供用に直して作ったもの。担任の先生が大人用の編み図が欲しいと母に頼んで、祖母が先生のサイズに直したものを送ったと、最近知りました。
一方で、母から見ても祖母は厳しい人だったそうです。お醤油事件は、私が結婚する頃ようやく母に話したのですけれど、「ありえる、ありえる」と言ってました。
まあ、私から見てもワタクシが成人するまでは母は厳しい人でしたので、母娘というのはそういうものだと思うのですが、それが完全に逆転していくのが、介護の時期なのかもしれません。
あれだけ厳しかった祖母が子供のようになっていく、と母はかなり衝撃を受けたようです。
私も、結婚して両親と離れて暮らすようになって、私達にはあれだけジャンクフード(袋菓子)は禁止していたのに、実はうちの母はスーパーでしばしばポテトチップスやそれに類するものを買うと知った時にびっくりしました。思えば、弟が頼むとかなりの頻度で買ってもらえたのは、実は母の嗜好もあったのかも。でもそんなの序の口で、これからいろんなことに驚くことが増えていくのでしょう。

というように、年を重ねると、親の意外な面を知ることになります。
でも、いよいよになるまで気づかないままという親子関係もあるようです。
母世代の知り合いからも「母が入院したら人が変わったように厳しくなって。いつも優しい母だったのに。こちらのお願いしたことを全部嫌がるのに、でも、孫娘にはやさしいんですよ」と伺ったことがあります。母から身体の自由が徐々に効かなくなってきた祖母が私と母の前では態度がことなり、母からの提案に3歳児の子供の様になんでも「イヤ」「したくない」「気乗りしない」とワガママを言うようになったことを思い出し、我が家もそうだったと話をしましたら、すごくホッとなさった様子。

母は私に「私もこうなっていって東風ちゃんに迷惑をかけていくのかな、って思うと今から申し訳ない気がするのよね」と祖母の話の最後には言うので、「私だって小さな時そうやってママに「いやいや」と言ってお手間をかけていたはずだから(←未だに手のかかるムスメであります)、順番こでいいんじゃない?」と答えています。

そんなことを思い出しながら読んだのが、この韓国の小説。
おかあさんだって誰かの子供だった_a0094449_7231173.jpg近頃、新聞各社、各種雑誌で書評が出ている話題の小説です。メディアで話題になる直前に、韓国人の配偶者のいる方から紹介された本でした。


これは単なる家族小説としてだけでなく、韓国現代史を支えた一人の女性の小説ともなります。私自身は自分と同世代の韓国女性の生き方の一部を知ることにもなりました。韓国語ができたら、そしてもっと韓国の社会事情を知っていたらもっともっと文章の意味することを深く感じられるような気がします。韓国の今の40代は専門職第一世代のよう。主人公である「母の娘」は作家という専門職であり、そういう意味で、親の世代と社会との関係や接し方が違うことを肌身で感じているわけで、男女雇用機会均等法第一世代には何かと胸がどきんとするような内容になっているかも。
そして、母は誰かの子供だったことを思い出す、そんな小説でもありました。

追記・日本でも、最近、自らの母親のことを題材に小説やエッセーを発表する女性作家の作品の出版が増えているようで、広告が目につきます。
Commented by olive oyle at 2011-11-04 13:03 x
東風さん、こんにちは!

「母をお願い」、わたしも買いました。
うちの母が読書好きで、いつも「なにかいい本ないかしら」と言っています。こちらのブログで「母をお願い」をみかけて、文庫本だし、韓国好きな母ならいいかも、と思いましてアマゾンで他の本を買ったときに一緒に買いました。

昨日家族で外出中にポストに届いていまして、昨夜から早速読んでました。最初は本文と家系図を何度もいったりきたりしてましたけど、興が乗ってきたみたいです。
Commented by eastwind-335 at 2011-11-06 15:32
olive oyleさん、こんにちは。
「母をお願い」は主語が二人称で始まったりするので、そういうひっかかりも含めて、翻訳が大変だったことでしょう。でも、読み甲斐のある小説ですし、韓流ドラマでは描かれないだろう韓国女性の一面を伺うことができる小説だと思います。
田舎の食卓風景が浮かんでくるようで、その点も気になるところです。

お母さん映画というところでは、チェ・ガンヒ主演の「エジャ」が気になってます。
by eastwind-335 | 2011-10-30 07:27 | Books | Trackback | Comments(2)

東風のささやかな毎日のささやかな記録


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