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鉄くん、こんにちは

先日、オレンジ色のそこそこ混んだ電車にのっていた時のことです。
ちょうど、小学生たちの下校時間だったようで、白いカバーのかかった学帽、白い半袖のワイシャツにグレーの半ズボン、スカートに、ピカピカの校章のついた黒く立派なランドセルを背負った小学生たちが、大人たちに混ざって車内のあちこちに座っています。

私の前にも二人の男の子が座っていました。
「ボクは今日は××駅で降りるから、それまで、隣の車両に行ってくる!」と一人が席を立ちました。
私はその先まで乗るので、彼らが降りたら着席しようかな、と思ったのですが、その日、とても荷物が重くて疲れていました。なので、座っている男の子に断ってあいているほうに着席しました。

しばらくすると、その男の子が立ち上がり、おもむろにジャンプしてつり革につかまろうとします。まだ小柄な男の子、なかなかつかめません。、ピョンピョン飛びあがり着地するとき、バインダーがどっちゃり入った膝上にある私の書類バッグの角に身体の一部がぶつかります。

少年が「ごめんなさい」と私に謝ってきたので、「痛くなかった?でも、今日みたいに混んでいる日にジャンプするのは危ないんじゃない?」と注意方々声をかけてみたら、この男の子は私に向かって「あの、あのですね」と・・・・。



「この電車、古い車両なんです。」と。
この頃、JRは新型車輌を各線に導入しているわけですが、この線はまだ古い車輌が走ることもあります。
私の隣に座りなおす彼に、
「そうね。もう、ほとんどは新型車輌ですもんね」と応える私。
「これは2両しかない一つなんです。いつも走っているわけじゃないんです。」
「まあ、そうだったの」
「この電車に乗れるのは最後になるかもしれないから、ぼく、思い出を作っているんです」
ふと胸元を見ると、新幹線の先頭車両がついているファスナー形のネームカード下げ(何を吊り下げているかまでは見ませんでしたが)をかけているのが見えます。

「ボク、ひょっとして、鉄道が好きなのね?」
「あれ?ばれちゃいました?そうなんです。え?でもどうして?」
「だって、そこに新幹線がついているじゃない?」
「あ、そーか!そうなんです。とっても大好きなんです。だから、今日は、チャンスなんです。座席に座って、吊り輪に触って、手すりに触って・・・記憶に残して思い出にしたいんです
と愛おしそうに座席を触ります。
「もう一回だけ、つり革にチャレンジしよう」と軽く飛び上がり、ようやく満足したようです。

「ああ、僕、この椅子が好きなんです」
「そうよね、古い車輌と新しい車両は全く座席のクッションも高さも違うわね」
「えー?わかりますか?」
「古いほうは、弾力があるけれど、新しいのは硬いし、床から少し距離があるわよね」
「そうなんです!」
「ボク、八高線には乗った?」
「名前は知ってます。車輌数が少なくて、ディーゼルなんですよね!」
「そうそう。私、この前、夫と乗ってきたのよ」
「いいなあー。羨ましいです。どんな感じでしたか?」
「一番私が驚いたのは、自分でドアを開けることなの」
「えー?!どうやって?」
ということで、先日の八高線体験を語りました。
「新型車輌にも内側に開けるってボタンがあるけれど、あれとは違うの?」
「あれは緊急時だけでしょう?八高線は日常なの。だから、車輌の内側にも外側にも開閉のボタンがあるのよ。そうそう、新型車輌のボタンは普段は絶対に押しちゃだめよ」

そんな話をしていたら、もう一人のお友達が戻ってきました。
少年が私をお友達に紹介。「この人、すごいんだよ。八高線に乗ったんだって。ボタンのこと教えてくれた」と。見ると、そのお友達もお揃いの新幹線のついたものを首から提げています。「二人とも本当に電車がすきなのね!」と感心していたら彼らが降りる駅となりました。
「あ、降りる駅だ。さようなら。色々おしえてくれてありがとうございました!」と降りていきました。

後で聞いたら、どうも某有名小学校の生徒と私は遭遇したようです。
昨今、知らない人と話をしちゃいけない、とかいう時代だというのに、彼の方から話しかけてきて、それだけでもびっくりでした。そしてその言葉遣いの丁寧なこと(再現したとおりですよ!)。大人に慣れている生活なのかもしれませんね。

日ごろから、思いがけない人に話しかけられやすい私ではありますが、なんとも心和むひと時でした。
それよりなにより、「思い出の作り方」には感心しちゃいました。まあ、ジャンプはちょっと・・・ですけれどね。

翌日、その話を職場でしたら、「子供は大人の黒い部分をすぐに見抜くっていうじゃないか。悪い人じゃないって子供から承認されたものだから、自信を持つと良いぞ」と言ったその口で、「いや、よっぽど家庭で会話のない家で、東風でもいいから話をしたかったのかもしれない」と言い出すお兄さんが。なるほど、そうかも・・・と納得していたら「あらら、そこで「酷い!」といわずに納得しちゃダメでしょう?」と口を挟むお姉さん・・・。
Commented by snowdrop99 at 2009-07-04 18:11
いやいや東風さんの鉄分に反応したのかもしれませんよ。
八高線なんかそう乗るものじゃないと思いますし。
Commented by himekagura at 2009-07-05 02:49 x
鉄な男の子って今でも健在なんですね~。
やっぱり東風さんのオーラが、いい人オーラだったのだと、、。ちょっと鉄の混じったいい人オーラですかね??
Commented by eastwind-335 at 2009-07-05 13:12
snowdrop99さん、こんにちは。

あはは、鉄分は医者からも誉められるんです。だから、普通だったら貧血になる状態にいつもあるのですが、お蔭様で、それは避けられています。
あ、そっちじゃないですね(笑)。八高線ネタについては家人のおかげですね。夏休みを利用して、もっと色んな電車に乗りたいなと思ってます。
Commented by eastwind-335 at 2009-07-05 13:22
himekaguraさん、こんにちは。

いやいや、びっくりでした。うちのお兄さんが言うように、誰かにとにかく聞いてもらいたかったのかもしれません。学校でも鉄くんは立場が弱いのかな?
単なる鉄くんなだけではなく、自分のやり方で思い出を作りたいというなんて、すごいですよねー。大人が忘れていることを教えてくれた気がします。
Commented by terrarossa at 2009-07-05 13:37
東風さん、お久しぶりです。実は私も鉄過剰気味の乗り物好きです。鉄くんたちとの心温まるエピソード、いいですねえ。
首都圏にもボタン式の半自動開閉車両があったとは知りませんでした。八高線がそうなんですね。
うちの地元路線の車両はほぼすべてボタン式の半自動開閉式(自分でボタンを押さないと開閉しないドア)です。たまに、ドイツの鉄道みたいなほんとの手動式(子供では開けられないほどすんごい重い)車両もあります。寒冷地のローカル路線はだいたいこの方式なんじゃないかな?冬季に駅で停車しているときにドアが開けっぱなしになっていると車内が大変寒くなるため、列車のドアも開けたら閉めるというルールになっています。田舎は駅ごとの停車時間も長いですし。
by eastwind-335 | 2009-07-04 08:46 | 日常 | Trackback | Comments(5)

東風のささやかな毎日のささやかな記録


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