鹿のご一行さまに遭う

海辺の街へ帰り、カレーで歓待され、翌朝、古希を迎えて約2週間の父の運転する車で別の海辺の街へでかけました。

毎日が日曜日の両親。
実家に帰ることは休日を意味する私。
心躍る5月の朝でした。

海辺の道を走るために、となりの市へ入ります。
「あー、今日、私、免許持ってないんだけれど」と私。
「えー、パパに何かあったらどうするの?」と母。
「大丈夫だよ、それに東風ちゃんは、もう10年以上、運転してないんだろう。オモチャには危なすぎるよ」という父に、「えー、みんな、自分が産んで育てた子をもっと信用しようよー」と涙声の私。
「まあまあ、パパに何事もなければいいんだから」と笑いながら母がいいます。
車内はとても和やかな雰囲気でした。

父が、「海辺に近い道は南側だから・・・」とY字の左側の道へ侵入しました。すると、道の入口にホンカンさんが立ってます。
「なんでここにおまわりさんがいるのかな」と不思議に思っていたら、数メートル先にも数人のホンカンさんが。前方2台に続き、父の車も左に寄せられます。そして、「はい、窓あけて」ニヤニヤした声のでかいホンカンさんが父に呼びかけます。
父はびっくりして、シートベルトを外し外で話を聞こうとドアを開けようとすると、窓をコツコツと叩き「あー、席を立たない!窓をおろして!」と。車内の三人は何事だろう・・・と緊張。
父が窓をおろすと、「免許証を出して」とこれまた大声で。父が免許書を出すのに手間取ると「あー、免許、持ってない?」とたたみかけるように言い出します。

ええ、ネズミ捕りに遭っちゃったんです。平日の7時半から1時間、通行禁止の道だったのでした。普段、ここを利用するのはもっと遅い時間のため、そして、気分としては休日だったために気付かずに、前の車について、いつもように走ったつもりだったので、私達はびっくり!
省略しますが、すごく腹立たしいホンカンさんでした。やること言うこと一つ一つがいやらしいんです。本当はこっちが心から反省しなくちゃいけないのに、そういう健全な発想がどっかにぶっ飛ぶほど。
多分、この道は、平日の朝に抜け道のように使われることで近隣の方もご苦労なさっているのでしょう。そこはとても閑静な住宅地なのです。ええ、この朝も5月の冴えきった青空の下、8時過ぎだっていうのに、家から生活の物音一つしないんですよ。そこへ響く父のフルネーム。
そして、父がようやく解放される際に「この先でまた、こんな目にあうのは困るので、この道路にでるのに、ここをまっすぐいってもいいのかね」と尋ねたら「そんなもの、標識をみて自分で判断してください」と。
ごもっともなことだと思うんですけれど、その言い方がまたイヤな感じ。

車内では、一瞬「あーあ、しょっぱなから・・・」となりそうに。珍しく母が「ケチのつけ始めだとしたら困るわね」と心配そうな顔。雰囲気が悪くなったなあと思い、私は、「すごいよねえ。ケーサツからの古希のお祝いが初のネズミ捕り体験だなんて、めったにそういう人っていないと思うのよ。70歳にしてネズミ捕りデビューって、今度、同窓会でネタにできるんじゃないの?」と軽い口調で父をからかうと、「そうだなあ。知らずにここを走るのは地元じゃない証拠だろうから、この辺りに来るヤツに教えておこうっと」と父も乗り気。そして、三人で、悪運はあのホンカンが全部持っていったはずだから、この旅行は絶対に楽しくなる!と妙な自信を覚えながら、車を走らせます。





今回の旅行は、両親がGW中に一泊旅行をするとその1年が無事に過ごせる、というある種のジンクスのために毎年でかけるのに私が便乗したもの。なので、すべての企画は父がおこなっています。

a0094449_1917396.jpgまずは、西へ西へと売る間を走らせます。いくら平日とはいえもっと混むかと思ったのですが、高速が1000円になる(しかもETC車のみなんですってね、あれ)のは休日だけだからか、びっくりするほど道が空いていました。
私達の前も後ろもなーんにも走っていない、なんてことも(やっぱり、あのホンカンさんが全部悪運を持っていってくれたのね、と母)。予定より早く、まずは、両親オススメのほうとうのお店へ。

a0094449_19181696.jpgほうとうって、おうどんとちがったおいしさがありますよね。そして、この土地の食生活の厳しさに思いをはせます。でも、いまじゃ、こういうのがご馳走なんですものねえ・・・。

a0094449_19274376.jpgこのお店のある場所は、どうももとは酒屋さんでもあった様子。
地元の葡萄をつかった赤ワインを買ってみました。


食後、富士五湖へ。実は両親、3月にもこのあたりにバス旅行で来たのだそうですが、悪天のため、本栖湖で千円札の裏側のデザインの富士山を見ることができなかったのだとか。で、リベンジかたがた、本栖湖未体験の私を案内してくれます。
a0094449_19294100.jpg比較的年配のカップルが多かった時間帯。ご夫婦で仲良く富士山をバックに写真を撮っています。
そこへ、私がこのポーズで撮影。「東風ちゃんったら・・・」と両親がまずびっくり。
そして、それをみている方々が、私達もやってみよう・・・と。
私の高校は冬になるとそれはそれは素晴らしい富士山を見ることができました。しかも、遅刻寸前で慌しく坂を駆け上っている最中に、ふと振り返ると、どどーんと雪を頂く富士山が見えるのです。または帰りに夕焼けの富士山を目にして坂を下りるときに、言いようのない気持ちになったものです。北斎や広重もこの風景をみたのかもしれない、なーんて思うこともしばしば。ですが、それは冬の富士山でした。晩春というか初夏の富士山は初めて。なんともまろやかな様子に、両親も私もウットリ。


a0094449_19553685.jpgまた、芝桜まつり会場からも富士山が。ちょうどよい人数の見学でしたが、翌日はもっと混んでいたことでしょう。台湾かな?中国なのかな?とにかく中国語圏のツアー客の方もいらしてましたよ!ハオ、ハオと言ってました。それから、特産市もでていて、鹿肉カレーなるものも・・・。私と母とで、ちょっと浮いているぐらいだったりして、なんて軽口を叩いて、一周していよいよ本日のお宿へ向かいます。


そこは父が元勤務先の企業年金機関が伊豆高原に持っている宿舎。「なんとかスカイライン」を乗り継いで伊豆高原へ南下するのですが、その「なんとかスカイライン」へ行くまでに途中、1時間近い渋滞があり(横から車が入ってくるため)、予想外の展開に。
昼間の道はどれだけでも走るけれど、夜の道はねえ・・・という父の声にフト窓をみると、それまで夕方の美しい風景に家族三人ワーワー言っていたのが、何時の間にか日が沈んでいました。そしてフト窓を見ると、「鹿に注意」のピクトさんが。両親が何も言わないので黙っていましたが、ドイツじゃなくてもこういうところに鹿がいるのね・・・と思ってふと、顔を前に向けると、暗い山道に鹿が5,6頭でしょうか!どっから降って来たのか?と私がびっくりでしたが、あっちもびっくりしたような顔でこちらを見ています。映画のバンビは敏捷だったのに、まったく、ホンモノときたら・・・!一部は横へ走り出していますが、ボーっとしたのもいるんです。
「パパ、パパ!鹿!鹿がたくさん!減速して!」と思わず叫んでしまいました。
「え?え?」と父が目の前の鹿に驚きながらブレーキを踏みます。母なんて、聞こえもしないのに「バンビちゃん、どきなさい!」と言い出す始末。
前も後ろも車がなかったおかげで、父は思ったように減速でき、そのボンヤリさんにぶつからずにすみ、彼らが道路からいなくなるのを確認できました。
しばらく、三人とも口がきけませんでした。三人で轢かずに済んだことを感謝しました。道路横の標識に両親は気付かなかったので、両親は前を見ていたけれど私が叫ぶまでここで鹿に会うとは思いもしなかったとのこと。母は以前、弟の駐在先からドライブに連れて行ってもらったときに、結構、車道で鹿の遺体をみかけたとのこと。でも、日本の、しかも伊東にいるなんてねえ・・・とびっくりしていました。
あとで、あんなところでぶつけたり、轢いたりしたら、私たち、どうしなくちゃいけなかったんだろう、と話し合いました。で、三人で出した結論は、警察に電話して、ほかの鹿たちと車がくるのを待つしかないと・・・。この5頭って親子なのか親戚なのかお友達なのか、とにかく仲間を見捨てないって感じがするんです。だから、ボンヤリさん(まるでオットルくんみたいな感じでした)が道路の端に来るまで待っているんです。それもまた、両親の心をうつことに。そして、二人揃って、そのボンヤリくんが私みたいだった、というんです。「そういえば、あなたがコドモのころ、ドッジボールをしていても真正面にくるボールを避けられなくても、妙に余裕のある表情でボーって立っていたわよね」と母が忘れていたかった過去を思い出させたり・・・。ちょ、ちょっと、お二人さん、そのボンヤリを生んで育てたのは、お二人なのに・・・!
このあと2度ほど鹿に遭いましたが、1度は道路横で私達が通り過ぎるのをじっと待っていたし、もう1度はちょうど横切るところ。やれやれでした・・・。
ほうぼうの体で到着。夕食をすませて、10時前には親子三人で川の字になってイビキ合唱団を結成しながら就寝。早起き揃いのため、朝5時には起床。三人であーだのこーだの話しているうちに朝風呂の時間に。朝日が入ってくるお風呂、気持ちよかったです!
翌朝は、見学したかったガーデンがまだ時期が早いとわかり、急遽天城越えを。その途中でガイドブックで唯一私が心うごかされたジューススタンド(道の駅)へ。
a0094449_214357.jpg「ウルトラ生ジュース」というオレンジジュースです。1杯飲んだら3年長生き、というコピー付き。本当かしら?
味、ですか?えーっと、えーっと、甘かったです。なんでも、ミカンの花の蜂蜜が入っているらしい・・・。


a0094449_21133516.jpgお昼は河津の大滝近くのお店でおそばをいただきました。


a0094449_2114338.jpg店員が勧めたので、GWまでの期間限定いちごデザートを。私は甘いのはイヤなので、いちごジュースを。蜂蜜がはいっていませんように、と思ったのは注文後でした。おかげさまで、甘みは別につけるようになっていました。



一人旅だと、お昼を食べ忘れる私ですが、今回は食べてばっかりの感もある旅行。これぞ家族旅行の醍醐味だな、と思いました。そして、あちこちで美味しいモノを食べられたのも、父がひとりで運転してくれたおかげ。今日も、祖母のご機嫌伺いのために車を出してくれたり、と父にはこの年齢になっても頭が上がらない、手のかかる娘なのでした・・・。
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Commented by toramutti at 2009-05-04 03:59
素敵な親子の旅ですね。そして、うふふ、やはり東風さんの旅にはハラハラがあって、楽しく読ませていただきました。
しかし、いやなホンカンですね。こういうのがいるからきちんとした人々も一緒くたに、いやだよねー、あいつら、って言われちゃうんですよ。まさに「虎の威を借りる」なんとかですね。
おそばの横にあるのは、本物のわさびですねっ!!あぁ、おそば、食べたいですっ。
Commented by pepe at 2009-05-04 23:23 x
東風様、GW満喫されてますね。羨ましい!私が捕まったホンカンは真逆なタイプでした。交通量の少ないバイパスで15キロオーバー。こんなところで、しかもこの程度で捕まえるなんて!と怒り心頭。どうやってホンカンの隙をついたろうかと闘志満々で車を降りたら・・・「お嬢さん、お急ぎのところ止って頂いてまことに恐縮でございます。大変遺憾ではございますが制限速度を15キロほどオーバーされておられたんですよ。」と何処かいいホテルで働いてるんじゃないですか?な丁寧さで出鼻をくじかれ・・・。いいおばさんにお嬢さんと言う口調もなんちゃらモンタさんとは違うニュアンス。やられちゃったって感じでしたわ。しかし鹿さんって敏捷なのかどん臭いのか。奈良でも交通事故が多いと聞きます。下手したら乗ってる人間も大怪我しちゃいますものね。ご無事で何よりでした。
Commented by eastwind-335 at 2009-05-05 09:57
虎ママさん、こんにちは。
いや、鹿にあったり、あと、ネコがいたり・・・日が暮れてからの山道の運転はライトをつけてもコワいコワい。父はそれほどスピードを出さないのですが、それでも特に下っているときは自然とスピードが出たり、膨らんで走ることになりかねず、こんなところで動物とドン、なんてことになったら、私達、一生そのことを悔やむに違いない、と、ホッとしたんです。
もちろん、今回の件は絶対私達がいけないのですが、だからってホンカンさん、その態度はないでしょうがっ!と車内でプンプンしていた私です。また、父がねえ、その手の人からすると、冷静で澄ましたように見えるみたいで・・・。
Commented by eastwind-335 at 2009-05-05 10:05
pepeさん、こんにちは。
ホンカンさんにもいろいろいますよね。pepeさんが遭遇したホンカンさんだったら、うちの父、チップがわりに言われた罰金額以上払っちゃうかも?!
鹿との遭遇は面白い思い出となりました。こっちもびっくりでしたが、あちらも「どうしてここにあなた方が・・・・」という顔をして立ちすくんでいたんです。オットリしているんでしょうね。実は、私と母、お互い、車から降りて鹿のところへ行き「ごめんなさいね、大丈夫?びっくりしたでしょう」って言いに行きそうになったんです。それぐらい、なんだか親近感を懐く鹿たちでした。
猪はぶつかったら、車に乗っている人のほうが怪我することもあるそうですよ。標識は侮れません。
by eastwind-335 | 2009-05-03 18:28 | 季節モノ | Trackback | Comments(4)

東風のささやかな毎日のささやかな記録


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