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新作を観る、創る

お正月につづき、国立劇場での2度目の歌舞伎観劇となりました。

演目は「江戸宵闇妖鉤爪(えどのやみあやしのかぎづめ)」
新作歌舞伎なのだそうです。
今回も母につきあってもらいました。ある種のチャリティーのチケットなのですが、1万2千円の席を・・・ってなかなか同世代にはお願いしづらいものがあり・・・。

私は数ヶ月前の吉右衛門のほうがよかったのですが、母が染五郎を見たいということで、今日の観劇とあいなりました。

原作は江戸川乱歩の「人間豹」。ちなみに未読のまま観劇となりました。

出発前に電話があったりして、せっかくのカメラは置いてきちゃうし、どういうわけか永田町は丸の内線だと思っちゃうし・・・。電車の中でそのことに気付き、東京駅からタクシーで三宅坂まで急ぎました。途中、すばらしい黄金色の銀杏並木、和田倉門、桜田門・・・。最高裁を正面から見たのって小学生以来かも・・・。ちょっとしたドライブ気分を味わい、時間前に到着。もっとかかるかな、と思いきや1140円で到着。

原作は、名探偵明智小五郎と美女ばかりを狙い手をかけ殺害する半人半獣の怪人との闘いらしいのですが、それを開国期の江戸におきかえてのお話。
明智小五郎は隠密廻り同心として幸四郎が演じます。気になる女性を殺されるなど事件の鍵を握る神谷芳雄青年は色男の下級幕臣神谷芳之助に。演じる染め五郎は人間豹の二役。ググったところ、明智小五郎、小林少年、明智の妻(文代)が揃う作品の一つらしいのです。小林少年ってどの役?と思っていたら、そうか、同心の小林が。だから最後に彼も出てきたんだ・・・(と後でちらしの裏を見て納得)。

オカジさん、おどろおどろした表紙の原作読まなくても大丈夫ですー!

いわゆる古典とは違って、新劇を見ているような感じ。これが現代の歌舞伎なのですね・・・。イヤホンをつけたらお約束事について、もっと色々お勉強になったかもしれませんが、ナシでも十分楽しめました。

歌舞伎というのは、作品の時代を過去へずらしながら、演者たちの生きる時代の世相を描く芝居だと前回の観劇前のお勉強会で教わりました。今回の芝居は親を恨みながら成長した青年のゆがんだ心が事件を惹き起こすのですが、それは、この1年のいくつかの猟奇的な無差別殺人事件を描いたものなのでしょう。今年ほど父子関係が問われる事件が続いたことはありません。
最後の明智のセリフに、父としての思い、人生の先を歩く者としての思いがこめられていたように思います。

さてさて、「市川染五郎大凧にて宙乗り相勤め申し候」が売りの作品なのですが、うーん・・・いや、すごかったんですよ。ほんと。でも、私と母はそのシーンでただ宙乗りするのではなく、舞台の明智たちのほうをチラとでも振り返って見たら、空間としての舞台に奥行きが出来たかもしれないね・・・・と。しかし、振り返るっていうのは改心と受け止められかねないし、心情としてはありえないはずだから、えーっと・・・。
ま、宙乗りにみんなが夢中になっている間に舞台から幸四郎たちは消え、気付いたら、永谷園のCMのような幕が下り、劇場内に灯がついていました。うーん、なんだか余韻を惜しむような感じがなくて。これもまた現代物ゆえなのでしょうかね・・・。



先週の土曜までの数日間、習字の会の書展が霞ヶ関でありました。
ビル自体は誰でもいつでも入れるのですが、開催された階はいつでも誰でも入れるわけではないそうです。フロアの一部はイギリスのクラブをモデルにしていて、女性は立ち入り禁止になっているんですよ!

今回は先生の先生がお書きになった着物や帯の書が作品の目玉。
どこかの大学の先生が染織なさり指定された場所へ先生の先生が書かれたもの。ちょうど私が当番の日に見学に来た実家の父と二人で先生の解説を伺ったところによると、墨に呉汁(ごじる 大豆をすって搾った汁)を混ぜて書いたものなのだそうです。
父とふたり、びっくりすることしきり。


模様がちょっと入っただけでも筆はひっかかるし、墨は乗らないし・・・で、泣きながら仕上げた私の作品。
「奥山にもみぢ踏みわけなく鹿の声きく時ぞ秋はかなしき」だけど、どうにも「かなしき」という感じがしない。他の方のような繊細な線がどうしても出なくて、なんだか健康的すぎる感じ。まるで、秋だー紅葉の落ち葉で焼き芋だーと、超ポジティブに秋を捉えているように見えて仕方ない、と父にこっそりこぼしたところ、父が「うーん。ボクには字のことはよくわからないけれど、いい軸で誂えてもらったのはわかる・・・」と。
うちの家人もその前日、仕事帰りに見学に来てくれたのですが、帰宅早々、「キミはひらがなを習っているんだよね。なのにどうして漢字も書いたの?」と。何を言ってるんじゃ、この人は・・・と思っていたら、先生から「東風さんのご主人はどうも誤解なさっているようで・・・昨日は他のお客様がいらしてお話が途中になってしまったから・・・」と万葉仮名についてのメモをいただきました・・・。赤面ですよ、まったく・・・。

私はこの会に入って2年がすぎたばかりで、一番ひよっこ。生徒さんの中には、ご姉妹とか、義理の姉妹という方もいらっしゃっるし、長い方はなんと3代にわたって先生にお世話になっているんだそうです。案外なところで人見知りをする私、みなさんお馴染みの中に伺うのは少々気がひけますが、本当に優しく接してくださり、気さくに趣味や旅行、他の習い事等々、色々な話をしてくださり、また新しい世界が広がった感じがします。共通の話題が少ないと思われる場合には、ああ、こうやって話しかけたらいいんだな、とか、勉強になりました。

私も歳を重ねたら(いや、日々を、ですね)こういうデキた人間になれるのでしょうか・・・。
そして、先輩たちの出品したような作品が書ける日がくるのでしょうか・・・。
Commented by nyf1403 at 2008-11-10 21:36
お母様と観劇・・羨ましいですわ。すてきなときをご一緒されたんですね。
えと、幸四郎って、昔の染五郎ですよね・・。そして、彼の息子が染五郎ですよね・・。それとも幸四郎、次の襲名、もうしたんでしたっけ。。
染五郎だったころ、好きでした。今の染五郎の方が線が細いいわゆるきれいな顔立ちとは思いますが、元染五郎の「男臭さ」が好きかもーです。
Commented by akberlin at 2008-11-10 21:48 x
何をおっしゃるうさぎさん、ですわよ、オクサマっ!お若い今から「日々をちゃんと重ねていらっしゃる」といつもお見上げ申し上げておりますです・・・日本語ヘン・・・。

朝の奥様番組に染五郎丈が出演していて、「ボク、本当は高所恐怖症なんです」って。大変ですねぇ、役者さんは・・・。
Commented by オカジ at 2008-11-11 02:11 x
レポートありがとうございます!おどろおどろしくないですか?(笑)
親子の関係が描かれる作品なんですね・・・。歌舞伎は常に「現代劇」だとわたしも理解しているのですが、そういう点からも、単に乱歩の歌舞伎化という以上に、素材としても良かったのかもしれません。ゆがんだ親子関係、殺人・・・とくると、近松の「女殺油地獄」も、現代をそのままうつしたような作品ですが、やっぱ近松の時代も乱歩の時代も現代も、人間の本質は変わってないということかもしれません。
今回のは残念ながら見られそうにないのですが、来月は久々の歌舞伎座行きを予定していて、今からスケジュール帳見つめてニヤニヤしている状態です(笑)
Commented by himekagura at 2008-11-11 11:23 x
今の新作歌舞伎って、原作が江戸川乱歩だったりするんですね!それはかなりびっくりしました。
どうしてもチケットが高いので、歌舞伎とは縁遠い生活を送っていますが、そういう歌舞伎なら一度見てみたいなあ、、と思います。
Commented by eastwind-335 at 2008-11-13 05:50
nyfさん、こんにちは。
そうなんです。母と観劇し、2時過ぎにはお芝居がはねたので、お茶の水にある手芸専門書店(古書も扱ってます)にも行ってきました。
幸四郎は昔の染五郎です。染五郎は彼なりのよさがあるのですが、お父さんに比べるとどうしても「男臭さ」はないですよね。でも、自分の特徴をよく理解して役を選んでいるようです。
ちょっと新劇っぽくて、それもあって見やすい感じでした。
Commented by eastwind-335 at 2008-11-13 05:53
akberlinさん、こんにちは。

いや、日々をまっすぐ積み上げているというよりは、えーっと、ピサの斜塔なみに・・・(以下略)。
そうそう、ウチの母も同じ番組をみていたようです。高所恐怖症なんですってね。だからか、えーっと、宙乗りのところがなんだかテンポが悪かったのは・・・(苦笑)。
しかし、この芝居をやりたがったのが染五郎というのですから・・・役者は身体を張らねばならないんですね!
Commented by eastwind-335 at 2008-11-13 05:58
オカジさん、こんにちは。

子供のころ愛読していた「怪人24面相」シリーズのほうがずっとオドロオドロしてました(笑)。
今回は新作なので、また練り直すところもあることでしょうが、なんといっても、人生初めて「歌舞伎の新作」を観劇できて、よかったなーと思ってます。
オカジさんは12月なんですね。うちも母とあの歌舞伎座では最後だから一度見たいよねーといいつつ・・・。一幕だけでも見る機会があるといいのですが、混んでいそうですね。(しかし、本当に建て直しが必要なんでしょうかね)
Commented by eastwind-335 at 2008-11-13 06:01
himekaguraさん、こんにちは。

そうなんですよ。乱歩の作品をベースにした新作だったのです。
新劇のようで見やすかったですよ。同じ日に知人夫婦も観劇に来ていたことが昨日わかりました。彼らはいつもイヤホンをつけて観劇しているのだそうですが、「今回はイヤホンガイドの人が言うことなくてヒマそうだった」と話していました。
Commented at 2008-11-18 01:24 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by eastwind-335 at 2008-11-21 05:50
鍵コメ01:24さん、こんにちは。

お返事おそくなりました。
そうなんですよー、歌舞伎座改築、本当に残念。和光みたいに外観を残すという選択肢をとることが出来ないのかしらん・・・。江戸東京博物館の外部視察の形で東京都は小金井市に「たてもの園」があるので、そこで保存されるといいなあ・・・。
お申し出の件、ありがとうございます!12月はバタバタ月間なので難しいのですが、心にしかと覚えておきます。
1月は国立劇場ですね!チャリティー団体がこの演目のチケットをもっているようで、ひょっとしたらこちらには出かけるかもしれません。
by eastwind-335 | 2008-11-10 20:52 | 日常 | Trackback | Comments(10)

東風のささやかな毎日のささやかな記録


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