人気ブログランキング | 話題のタグを見る

石井桃子さん、百歳おめでとうございます!

日本を代表する児童文学者であり、世界中の優れた児童文学を翻訳によって紹介してきた石井桃子さん。
1ヵ月後の3月10日に100歳になるそうです!おめでとうございます!

それを記念して、銀座教文館で2月15日、3月8日午後2時半から、石井さんの作品の編集に携わった方々が石井さんについて語るイベントが催されます。石井さん自身はご高齢ですから、この場にいらっしゃらないでしょうね。イベントの案内は、私が登録している福音館書店からのニュースレターで知りました。

学齢期以前のコドモが出会う石井さんの作品には「ちいさなうさこちゃん」「ちいさいおうち」などたくさんありますが、私にとって、忘れられない一冊は「こねこのぴっち」でした。
これは幼稚園のお誕生日プレゼントでした。他のおともだちが、一枚一枚の頁が厚く、カラフルなアニメ顔のおひめさまが描かれている、よく知られたお話の絵本を先生から渡されているなか、私には『こねこのぴっち』が渡されました。

石井桃子さん、百歳おめでとうございます!_a0094449_12354736.jpg

←実家に帰って探したいと思いますが、こんな横長大判ではなかったです。







自分だけ薄く、毛色の違うものを渡されたとき、正直言って、うれしくありませんでした。お友達からも、他の子の時みたいに「見せて」「見せて」と言われません。自分だけがこういう本だったことに、ショックを受け、母に何度も「どうして、私もみんなと同じような絵本をもらえないのかなあ。先生、わたしのこと嫌いなのかな」と言っていました。母は「だって、東風ちゃんはもうシンデレラ読んだでしょ?白雪姫も読んだでしょ?おうちにあるじゃないの」と。最後には機嫌悪く「じゃあ、先生にお返ししましょうね。」と叱られる始末。いや、我が家にあるシンデレラや白雪姫は母の嗜好で「ディズニー」の絵のもので、それはそれで楽しんでいたけれども、やっぱり、子供心には、もっとわかりやすい絵のほうがうらやましかったのです。

そうは言っても、何度も何度も読み返しました。このぴっち、人と違うことをしたくてたまらず、そのために大騒動になってしまうのですが・・・。そこが似ていると先生は思ったのでしょうか!?

この絵本がドイツ語圏のもので石井桃子さんの訳だと気づいたのは、実は大人になってからです(東京のドイツ文化センター図書室に原著があったのです)。

石井桃子さんを一等最初に意識したのは、『ノンちゃん、雲に乗る』。これは小学2年生ぐらいの時に初めて読みました。何年かして、テレビで映画(鰐淵晴子が主演)を放映することになった日は、いつも通りに帰宅しても放映時間ギリギリだったのに、欠席した級友のお宅へプリントを届けに行かなければならなくなったのです。、家に帰ってランドセル置いて、プリント届けて、猛ダッシュで家に戻ったのでした。(この記事を書くのに、ちょっと検索してみたら、DVDが出ていることを発見!)
それから、長いこと自分では誰の作品かわからなかったけれど印象に残っていたのが『三月、ひなのつき』。こちらはは従妹にあげてしまったのでしょうか、中学生に新しい家に住んで以来、私の手元にはありません。でも、とても印象に残った本でした。地味な話なのですが、登場人物に偽りのない生活の匂いのする話だったのでした(絵は朝倉摂さんでした。子供の本にしては本当に上等なものですよね!)。どうしてこの本を読んだのか、今となっては全く思い出せないのです。ひょっとしたら、母が買ってきたのかも。
石井さんの作品集が数年前に出たときに、実はこの話が石井さんの作品であると知ったのです。長いこと探していたものが出てきたという感じでした。

石井さんは子供向けの小説が多いと思っていたのですが、大人向けの自叙伝に近いような小説もあります。それが、『幻の朱い実(上下)』です。戦前から戦後にかけての女性の友情物語です。かつて、私は仕事でこの時代を生きた方々のお話をうかがったことがありましたが、女性が自立するということを真剣に考えて生きてきた方ばかりでした。
正直言って、今の私たち以上に真剣に、そして真正面から女性の生き方にぶつかってくださったのです。そういう生き方を選ぶことができたというのは、ある意味での経済的な不安がない、高学歴であった、などの(恵まれた)条件もあるでしょう。でも、自立を求められていたわけではない、そのかわり自由もなかった時代を駆け抜けた人々のある種のすがすがしさをこの小説からも受けました。

石井桃子さんが、日本女子大学校(現、日本女子大学)を卒業後、文藝春秋社に入社し、犬養毅の書庫整理に行くうちに、孫である犬養道子姉弟の家庭教師となったことは、犬養道子の自叙伝に出てきます。『くまのプーさん』の日本語訳は犬養姉弟との出会いぬきには誕生しえなかったのは有名な話です。世界中で戦争の足音が聞こえつつあった時代に、彼女がどのような気持ちでこの本を犬養姉弟によみ聞かせたのか、そして、太平洋戦争直前の1940年に初訳を出版したのか(現在の訳は1956年以降の出版分からだそうです)、一度、そのあたりのことを伺ってみたいものです。お話してくださるほど、お元気でいらっしゃるといいなあ。
Commented by nyf1403 at 2007-02-10 21:48
「ノンちゃん、雲にのる」読みました。今思うと、あれは児童書というだけではないようにも感じてきます。もう一度読みたいな。
ちいさいももちゃん、って石井さんでしたっけ。猫のプーが出てくるお話。
Commented by eastwind-335 at 2007-02-10 22:42
「小さいモモちゃん」は松谷みよ子さんの作品です。これは(本嫌いだった)うちの弟が珍しく反応した本で、母は新刊がでるたびに買ってあげていました。
このシリーズは、これまた児童文学界では画期的な本だそうです。それまでタブーだった「保育園」や「親の離婚」なんていうのがテーマの一つだったから。でも、松谷さん自身の体験を自分の娘たちのために書くことにしたそうです。nyfさんの読んだのも、表紙は人形であるシーンを描いているハードカバー本でしたか?あの人形は、別れたご主人が新しい本が出来るつど作成したものだったそうです。そうやって、娘たちと父親の縁をつないでいたと後日談で読んだことがあります。
Commented by nyf1403 at 2007-02-11 03:14 x
そうそうそうでしたね。
松谷みよ子さんが、いま、週刊朝日かな、自伝を連載されているそうです。父が教えてくえました。
Commented by eastwind-335 at 2007-02-11 09:25
松谷さんといえば、「ふたりのイーダ」もありますね。最近、週刊朝日とは、とんとご無沙汰でしたが(見出しに品がなくなってから読まなくなりました)、まずは立ち読みしてみます!
Commented by penguinophile at 2007-02-11 20:50
個人的には、石井桃子さんと言えば「くまのプーさん」です!もー、ボロボロになるほど読みましたからねー。「こねこのぴっち」や「ノンちゃん、雲に乗る」も石井さんだったんですね。「こねこのぴっち」はドイツ語が原語なのですか!?じゃ、図書館で借りられるかなー(ドイツ語の絵本や幼児書に着手しようと思っている今日この頃)。

全然関係ないですが、サッカーW杯直前の日独親善試合だったかで、駒野が途中交代で入った時、うちの夫が言った台詞が「クマノ?クマノプーサン?」でした。彼の知っている数少ない日本語は「くまのプーさん」だの「トトロの猫バス」だの、異様に偏っております・・・。
Commented by eastwind-335 at 2007-02-14 21:52
penguinophileさん、お返事遅くなりました。ごめんなさい。
そう、「くまのプーさん」。日本と世界の子供をつなぐ本の代表ですよね!
ご主人の知っている日本語ってことは、penguinophileさんが好きなものばかりなのでしょうね!
こねこのぴっちは、実はおなじ作者による「たんじょうび」という絵本の続きなのです。図書館で見つかるといいですね。著者はハンス・フィッシャーです。
by eastwind-335 | 2007-02-10 11:59 | Books | Trackback | Comments(6)

東風のささやかな毎日のささやかな記録


by eastwind-335