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世界史未履修問題について

ここ数日の「世界史」未履修問題。

やっぱり、と正直思いました。世界史が必修になったのに、多くの人文系学部の入試で受験生が選択するのは日本史なんですから。

必修科目にもかかわらず、「受験に不要な世界史をやるのは時間の無駄、と生徒が言ったから」とか「進学率を上げなくてはならなかったから」という理由を全国各地の進学校の校長が言っているのを聞いていて、なんだかむなしくなりました。

学校のカリキュラムを「生徒の希望」でそんなにあっさりと変える、そこまで日本の教育はコドモに迎合してしまっているのでしょうか。高校は子供たちをとにかくどこかの大学へ押し込んでしまえばいいのでしょうか。

というか、文科省、面目丸つぶれ。世界史必修を促進した木村尚三郎先生が亡くなったから、このニュースが全国配信になったのかしら、と穿った見方すらしたくなりました。






私は共通一次(センター入試以前にあった国公立大学の一次試験)の五教科7科目世代の一番最後の世代です。学校は、3年生になってはじめて、私立文系・国公立・私立理系の3コースにわかれるという、進学校としてはまったくもってユルい学校でした。コースにわかれるといってもクラスはミックスなので、選択授業のところで教室を移動するぐらいでした。
ちなみに、受験生最大の敵、暗記科目である歴史は高校3年生になるまで授業がありませんでした。

当時、社会科の必修科目は、「現代社会」だけでした。歴史はどちらかを履修すればOKという時代です。国公立と私立文系は日本史も世界史も必修でした。

受験科目に社会が必要な人は、多くは日本史で受験をしていましたが、世界史の時間は「おまけ」だったか、といえば、そんなことはありません。通史で歴史を1年間(実質は7ヶ月あまり)で終わらせるのはムリなので、学校は、4月から「前近代」「近現代(産業革命あたりから)」にわけて並行して授業をおこなうのです。しかも、近現代史は日本史と世界史共に同じ先生だったので、最初の数ヶ月こそ各国史でしたが、19世紀後半あたりから日本史の授業も世界史というか、世界史の時間も日本史というか、総合的に歴史を見るというやりかたの授業をしてくださったのです。

前近代は、先生の趣味に走るところがあり、私のクラスは日本史は鎌倉時代で何ヶ月も足踏みをし、、世界史は古代エジプト、インド、中国、ローマ帝国のことで先に進まず、ルネサンス以前で受験となってしまいました。隣のクラスの日本史は土器でほとんど終わってしまったそうですから、受験的には私のいたクラスのほうが進んでいたのでしょうが・・・。

こういう変則的な授業を受けて、大学にどうにか滑り込んだとき、大学の授業のスタイルに何の違和感も感じることはありませんでした。

それどころか、すでに高校の先生の影響で学問としての歴史の面白さに目覚めつつあった私は社会科の教員免許も取ってしまったのです。室町時代や戦国時代、江戸前期を高校の授業で受けたこともなかったので、自習、ですよ。で、私は室町時代を実習で扱ったのです。「先生って、歴史が本当に好きなんだねー」と生徒から言われるほど、熱くかたっていたようです。これも、受験とは関係ない授業を旨とする母校だから出来たわけです。
結局は、免許を活かすことはない生活を送っていますが。

行政側は、受験を間近にしている生徒に不利益にならないようにといっていますが、世界史が必修だってことぐらい生徒だって、知っていたはず。履修してないのに成績がついていた学校だってあると聞きました。そういうズルって気持ち悪くない?という声は生徒たちの間で上がらなかったのでしょうか?最近は、県のトップ校に通うような生徒でも、そんな世間知らずなのでしょうか。受験間近だろうとナンだろうと、やるべきことをしてもらいたいものですわ。

いまの高校生たちに比べ、もっと過酷な状況下での受験だったはずなのに(定員だって、少なかったんですから)、受験勉強は個人に帰するなんていう暢気なことを生徒に徹底したあの高校で学べたことを、本当に幸運だったと思います。
by eastwind-335 | 2006-10-29 13:36 | 日常 | Trackback | Comments(0)

東風のささやかな毎日のささやかな記録


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