ニック・ホーンビィ考(10月29日、一部訂正)

ニック・ホーンビィというイギリス人作家がいます。
彼の作品は、ほとんどが映画化されています。そして、いつも不思議に思うのが、イギリス人(イングランド)を描いた作品なのに、映画の舞台の多くはアメリカに移されて作品化されているのです。つまり、ハリウッド作品になってしまう。それによって原作の持つ「イングランドらしさ」が半減し、文学作品としての「クスっ」と笑いたくなる話も、ばっさり切られるわけです。

もちろん、資本主義社会(特に欧米圏)の若者がどっかで体験をする話だろうと思うので、舞台がイギリスでもアメリカでも構わないのでしょうけれど。

「ハイ・フィデリティ」は、ジョン・キューザックが主人公。いや、彼はいやじゃないけれど(むしろ大好きなんだけど)、この映画はダメだー。これはイギリス人の主人公じゃなくちゃー。
「アバウト・ア・ボーイ」は、ヒュー・グラントで、ロンドンが舞台であるところは良かったんだけど、話の筋が変わってしまっている。ううーん、この筋でいいのだろうか。でも、ホーンビィがプロデューサをつとめたようだし。
「僕のプレミアライフ」は彼の小説作品(エッセイでした)の映画化第一弾です。最初、コリン・ファースでほぼ原作どおりに映画化されたけれど、日本では上映されず、DVDのみの発売。これは原作の味を生かした気がするけれど、かなりホーンビィーが口をだしたようです(たとえばBGMとかね)。

そして、つい最近、ハリウッドでリメイクされたものがあり・・・・。





リメイクされたものを一番最初にみたのが、1年ぐらい前の暮れの機内上映。
舞台はボストン。大リーグのボストン・レッドソックスがキーワード。
ジミー・ファロン(サタデーナイトライブレギュラー)演じるレッドソックス命のダメダメ男が、ドリュー・バリモア演じるエリート女性との恋愛を成就させるという話になっていたのです。
ま、アーセナルがレッドソックスになった、という点については、アメリカ人に「サッカー」なんて言ってもムダでしょう。そこは許しましょう。

実を言えば、機内上映を見たときは、物語の最初がファロンの独白から始まるということもあり、ある程度は納得できました。映画としても、なんだか、温かいものが全体にあふれていて、悪い映画ではありませんでした。
しかし、「フィーバー・ピッチ」というタイトルはいただけない。なぜなら、pitchとは、サッカー場(クリケット競技場という意味もあり)で、すなわち、イングランドプレミアムリーグにイカレちゃっている男子の話、なわけで、大リーグにイカレてる話だったら「僕のフィールドライフ」なわけでしょう。いずれにせよ、日本じゃこの映画は上映されないだろうなあと思っていました。

ところが、です。
それから半年ぐらいたった、ある日、女性向け雑誌を読んでいたら、この映画の試写会希望者の募集が出ているじゃありませんか。
しかも、タイトルは「2番目のキス」。ドリュー・バリモアの作品の「キス・シリーズ」一作という扱いです。それだけではありません。作品紹介は完全にバリモアサイドの視点。主人公もバリュモア。
ち が い ま す ! 

ホーンビィのあずかり知らぬところで「2番目のキス」なんという邦題を付けられてでも、映画化の認めてしまうのはナゼなのか。そのことは、ここ数ヶ月の私の謎でした。

それが、先日、ブックオフで購入した「ソング・ブック」(新潮文庫)。彼の音楽好きが彼の作品の中で炸裂して、それがいい味を出しているというのは有名な話なのですが、この本は、彼の過去、現在の思いと重なる音楽へのエッセーです。

その中で、彼には自閉症の息子がいること、妻と離婚したこと、彼の新しいパートナーと自閉症の息子を支えていること、などなどが記されています。それによると自分より長く生きるであろう息子の信託財産を作るために、どうも、彼は、作品の映画化を認めたようです。

これから、彼が息子を作品に登場させるのかどうかはわかりません。しかし、彼の作品の中に流れる新しい何かがあるとしたら、それは息子さんから受けた影響かもしれません。

最新作は2004年の小説のようです。早く翻訳がでないかなー。
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Commented by nyf1403 at 2006-10-25 23:22
「僕のプレミアライフ」、これ、買いました。今、実家で私を待っています。はい、コリン・ファースの映画、ということで買ったのです。
この小説家、ぜんぜん、知りませんでしたが、読んでみようかな、って思い始めています。
DVDが日本で発売されたのは、字幕翻訳者の熱意だった、って読んだ覚えがあります。

「パフューム」という映画・・賛否いろいろですが、原作者は絶対観ない、と宣言したとか。つまり映画化権は出版社にあった、ということでしょうね。ただ、この作家は、非常にかわった本当に変な奴という評判もあるので・・。
Commented by anthonberg at 2006-10-26 01:18
こんにちは。nyfさんの紹介でこちらに来ました。
ひゃー!ヒューの名前が!!(≧∇≦)
"アバウト・ア・ボーイ"は小説で読んで『あ、何かこの主人公ヒューみたい。』と思っていたらその後映画化、ヒューだったのでびっくりでした。ストーリーはちょっと違いますが…。
"ハイ・フィデリティ"私も大好きです!映画は映画の良さがあって、出演者がみんな個性がありますよね。私はジャック・ブラックのスティービー・ワンダーを馬鹿にするところとブルース・スプリングスティーンがカメオで出て来ただけで映画を支持したいと思います。(笑)イーベン・ヤイレ(女優)が出ていて驚きました。彼女デンマーク人、全然イギリスと離れていますよね?
小説は時間をかけて細かいところを描写出来るけど映画って2時間、と思うと描き切れない事も多いしどうしても小説の方がいい!って思う人は多いでしょうね。
Commented by eastwind-335 at 2006-10-26 20:57
nyfさまこんにちは。そろそろご帰国の日が近づいていらっしゃるようで、コリン・ファースもお帰りを首を長くして待っていらっしゃるのでは?!
「パヒューム」は開催中の東京映画祭でも上映されるようです。私は、まず翻訳を読まなくては。週末に図書館から借りてこようと思います。
Commented by eastwind-335 at 2006-10-26 22:06
anthonbergさん、ご訪問くださりありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします。
ヒューはああいう役がよく似合うのですよねー。イギリス人俳優をあまり知らないというのもありますが、彼以外は想像できないです。
映画のハイ・フィデリティ、私も決して嫌いじゃないんです。何度も繰り返し見てます。ドラマなんですけれど、でも、でも、なんだか、「ありえるー」というストーリーで・・・。
私はどちらかというと、小説から入ってしまうタイプなので、原作があるものに対して辛口なのかもしれません。映画を先に見て小説に戻ったのは、「太陽の誘い」(ベイツの「小さな農場」が原作)です。
by eastwind-335 | 2006-10-25 06:56 | 日常 | Trackback | Comments(4)

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