日はまた昇る!(15)知らぬ間に超えていた

もし、タイムマシンがあって戻ることができたら、この日に戻りたい、というのが最近の私の思いです。

ピレネー越えが今回の旅行のハイライトになるはずだったのに!
ピレネー頂点で「私、超えた!」とか思うつもりだったのに!
写真をバンバンとって「やったー!」とか書くつもりだったのに!

なんて書くと、この日、車で移動したのかな、と思われそうですが、いえいえ歩きました!

しかも雨の中を!

歩いたんですけど、自分のなかで、ここがピークのつもりだったからか、なんだろう、「え?それどこだった?」みたいなことに。そんな一日を振り返ります。

朝ご飯を食べている頃は曇り空だった。
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宿のオヤジは「降っても、すぐに止むさ」という。でも、大きなリュックは念のためポーターサービスを利用して、今日泊まるロンセスバジェスに送ることにした。いきなり16キロも歩くなんて、ピレネー超えだなんて、私にはムリだろう、と思ったから。途中でヘタるのは避けなくちゃ。

代わりに背負ったのは小さなリュック。水滴のマークがついていたので、雨対応なのだろうし、この道をいく人たちを泊める宿のおじさんが言う事なんだもん。間違いはない、雨はやむ。

そこが初心者だった。普段は何事も「念のため」というかプランBをいつも考えているのに。
いや、今回も念のため、は考えたのです。だから、雨に備えて、ジップロックで包んだり、配置を考えながらサブリュックに入れました。一番大切なものはお腹に来るようにサコッシュを短く斜めかけをしました。

この日の最大のミスは、サンジャンでサブリュックを買ったときにレインガードを買い忘れたことに気が付かなかったこと。

雨が降った後の晴れ間が見えた時にそのリュックを買ったから?
リュックについていた水滴マークに判断が甘くなったというべきかも。

サブバッグに入れたのは、レインコート上下、傘、救急用グッズ、汗用タオル、眼鏡、サングラス、水、カメラと充電池、使わないお金、メモ用ノート、おやつ、宿で作ってもらったサンドイッチ。サコッシュには、すぐに取り出せるように、その日使う程度のお金、パスポート、スタンプ帳、ボールペン、色付きリップクリーム、鏡。鏡はリップを付けるため、じゃなくて、コンタクトがずれた時に備えて。
雨具は道中、本格的に降り始めたら着たらいいのかな、と思っていました。が、カフェに行くと、みんながしっかり準備をしている。あわてて、リュックから雨具を出し上下を着て、前日と同じく、アイダたちと出発。
手先が冷たくなると私はダメなので、ストック用の手袋も最初から着用(ニットの手袋と違って着用が難しいから手が乾いているうちに着けておいてよかった、としみじみ思いました)。

最初は空もやや明るいから大丈夫だろうなーと思っていた。
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今日は上って下る、という一日。
だんだんと風が強くなっていきます。
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晴れたら爽快な風景だったよねー、などと語りながら一歩ずつ進めていきます。霧雨がわりとしっかりとした雨になる時とが繰り返される。
一本道ではあるけれど、上の写真のように獣道というか人が放牧関係者が歩いているらしい道などもあって、それで違う道へ行ってしまう人もいるらしい。
だから、途中にこういう目印があるのです。
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黄色い矢印が私たちの命綱。

上るばかりの人たちではない。一人の男性が山を下りてくる。「昨日宿で一緒だった人よ。眼鏡を宿においてきちゃったんですって」と誰かが教えてくれた。
足早に私たちを抜かし通り過ぎる人たちもいる。だけでなく、どのあたりだったか、とにかく眼鏡を置いてきたという男性が再び戻ってきて「眼鏡はなかった」といって私たちを追い抜かしていきました。
私が遅いのではなく、むしろアイダたちが遅い。私に合わせているのかなあ?そうだったら申し訳ないなーと思いながら歩く。
だんだんと霧雨の時間が短くなってきた。
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本降りになるのかと思いきや、時折止む。
けれど、雨が止むというのはそれだけ風が強いってことかもしれなくて。雨雲は次々やってくる。
ここにも黄色い矢印が。フランス国旗の色が隣についているのが、ちょっとした自己主張ですね(笑)。
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昨日、3回目という女性が言っていた「二つの十字架」まではとにかく真っすぐ道なりに行く、だよね、と3人で言いながら歩く。それでも「こっちのほうが・・・」といって違うところを曲がっていった人たちもいた。

もう二つの十字架を超えたあたりだったかなあー、ここ・・・。とにかく、雨がひどくなってきた。
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素敵な風景があっても、心のアルバムに入れるだけ。だって、シャッターを切ったら遅れちゃう。
キョロキョロとする間もない。
マリア様が旅人を見守っているという場所も気づかず。(←後日、ガイドブックを見直して気が付いた!)
ということで、実は二つの十字架に着いたときも写真を撮りたかったのだけど、風雨が強いときでお腹あたりでゴソゴソするサコッシュからipodを取り出す気もせず。

後から(帰国してから)、ほかの人の体験記を読んで知った。あの風はあの道特有のもので、ナポレオンもあの風に手こずったことを。(だもので、この日歩いた道を「ナポレオンルート」と呼ぶのだそう)

時折「あー、ここが映画「じゃ、ちょっくら行ってくる」で風よけをしているところねー」などと思うこともあったけれど、英語でそんなことを軽く言えるような「頭の体調」でもなく。
アイダはますますスピードが遅くなっている。アンソニーはアイダのリュックの背負い方がよくないと思いっきり肩へ沿わせるようにしている。それがすごく痛いらしく、苦情をいうのに、アンソニーはおかまいなし。

すごく急で細い坂道(それもぬかってる!雨水が流れ落ちてくる!)を下りる場所がありました。アイダが遠回りをして舗装道路を歩こうか、と。私もなんとなーく降りられるかわからない。どんくさいからなあ、と。ところがアンソニーは「僕が先に降りるから、キミたち、見ておくんだよ」と。ということで3人無事に降りました。
ストックが身体を支えたり、手の代わりになったり。やっぱり、これは持ってきてよかった。

急な坂だったなーと思ったけれど、風雨のことを考えるとipodを出す気力もなく。そして、二人に振り返らせちゃいけない、ついていかなくちゃ、とその場を離れました。

もっとすごい山道を上がったり降りたりするのかと思いきや、あの下りをすぎると、朝から歩いていたような舗装された道ではなく、ぬかった道を歩くのですが、高低差が少なくなっていきます。
そうなると、背中が軽い分足取りも軽い私。一方、アイダはどんどん遅れていきます。当然ながら、アンソニーも遅くなる。二人から「先に行っていいから」と言われるけれど、「じゃあ」ってわけにもいかない。

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しばらくすると、ナバラ州に入ったことがわかる場所へ。
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こんなところで写真を撮ってどうするの?といわんばかりのアンソニーでしたが、私は日本の家族に後から見せたいから、アイダも一休みしたいから、と何枚かipodで撮りました。

晴れていたら、今日の縦走は時間がかかったかも。それぐらい道中はどこもかしこもカメラに収めてみたい風景だった。雨でも一人だったらそうしていたかも。

雨の中で出会った人たち。
たぶん、アイダたちを待っている時に撮ったのだろうと思います。
彼らは私たちと進行方向が逆(黄色い矢印は進行方向を指すので)。逆ピレネー超えなのかも。地元の人なのか、散歩のように傘をさして歩いている人もいれば、見るからにピルグリムの人も。足元は良くないのが写真からもわかるはず。けれど、歩きにくいとは私は思わなかった。むしろ、いつ、次の坂(上りにせよ下りにせよ)が来るんだろう、と身構えていた。
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雨の山の中で鈴の音を鳴らしながら歩く馬たち。
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暴れることなく人に道を譲り、静かに人が通り過ぎるのを見ているんですよ、この馬たち!
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泥道が終わり舗装された道路に到着。「どうせまた泥道に戻るんだ」ぐらい思っていた。ところが、アンソニーが「やれやれ、到着だ!」という。最初は、疲れて寒さを訴えていたアイダを励ます言葉だと思っていた。(山では、目的地がかなり先であっても「もうすぐだよ」ってよく言うんですよねー)

でも、この舗装された道こそが、ロンセスバジェスの入り口だった。街の看板に「ロンセスバジェス」と書いてあるのを見て、アイダと二人で「本当についたんだ」と声をかけあいました。

雨は止まず、お腹からipodを取りだす気もおきず。そういうわけで、到着した時の写真はありません。

歩ききった!という達成感よりも、軽い疲労は覚えているけれど、もう終わり?みたいな気持ちが湧いてきた。

アイダが前日と同じ事を言いました。「東風はこんなに小さいのに、息が上がってないのね」と。


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Commented by Alichen6 at 2017-10-21 17:22
東風さんっ コメントを何度かトライしたのですが、またまたエラーになってしまいましたので、細切れで投稿させてくださいっ すみません。
Commented by Alichen6 at 2017-10-21 17:23
(細切れですみません)東風さん~たたたたたタイヘンな旅をなさっていたのですね!ハードですが、やり遂げたときの気持ちは、きっと清々しいんだろうなぁと想像しています。私は普通の旅でも足腰に来るようになってしまったので、まずは基礎体力をつけなきゃーのレベルです。
Commented at 2017-10-21 17:23
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by eastwind-335 at 2017-10-25 06:49
ありちゅんさん、おはようございます。
大変な旅ではあったはずなのですが、なんといっても「背中が軽い」分、足取りも軽かったのでした。山歩き最終日に、持ってきた荷物を(ほぼ)背負って歩いたときに、色々反省することになります。はやくその反省の弁をブログに書けるといいのですが、なかなか時間が取れず・・・。
私は、最近「歩くのは苦ではないけれど、小走りもしなくなったなー」と気づきました。で、ちょっと小走りして通勤してみたのですが(単に遅刻ギリギリ)、息は上がるのに足は上がらないという事実に愕然としています。
お習字の先生は90歳を超えていますが、毎朝30分以上散歩をなさっていて、お元気です。足腰は大切ですね。
Commented by eastwind-335 at 2017-10-25 06:50
カギコメさま、おはようございます。
大丈夫です。待てます!待つオンナですから、いろんな意味で(笑)。これがきっかけで人気が出るといいですよねー。
Commented at 2017-10-25 22:33
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by eastwind-335 at 2017-10-29 08:25
鍵コメさま、ご連絡ありがとうございます!嬉しいです。
お仕事でお忙しいと思いますので、ご都合はお任せします。本当にありがとうございます。
Commented at 2017-11-02 21:10
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by eastwind-335 at 2017-11-03 05:30
鍵コメさま、お知らせありがとうございます!
ご連絡いたします。
by eastwind-335 | 2017-10-21 06:22 | 旅の思い出17ヤコブの道 | Trackback | Comments(9)

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