日はまた昇る!(13)これが旅というものなのか

私は朝型なので全く困らなかったのですが、この旅は朝が早い。(私の寝袋です)
a0094449_08094329.jpg
たいてい、8時には宿を離れなければならないというルールがある。もちろん、毎日巡礼者がやってくるのだから、部屋の片づけなどをしなくちゃいけないわけで。

朝食のテーブルは挨拶ではじまります。宿の女性オーナーさんが新しく入ってくる宿泊者の名前と出身国を教えてくれて、みんなが口々に手を挙げたり挨拶をする。特に一人でやってきた人たちにはオーナーさんが声をかけて今日の予定を尋ねます。それによって、今日のうちにロンセスバジェスまでの20キロほどを歩くのか、途中のオリソンまで(9キロほど)にするのかがわかるのです。
私は初めて山を歩くし体力が続くかわからないのでオリソンに泊る、といったら、オリソンで泊るのはいい考えよ、と声をかけてくれました。

観光局の人が「朝ごはんがおいしい」と言っていたので、てっきりビュッフェ方式なのかと思いきや。しかし、フランスだからか、トーストとジュースとジャムが基本。
普段、私はパンにバターは付けないのですが、バターはエネルギーの元になる気がしてたっぷりと。
日本ではベーコンがあれば、食パンにベーコンと溶けるチーズをのせてトーストしたものを1枚食べています。とにかく、ここでちゃんと食べておかねば、とこの程度の大きさだったらパンは2枚だけど3枚食べました。
a0094449_08101335.jpg

欧米の人で2時間だったら私は3時間かかるかな、と思いながらパンにバターを塗りました。
パンも、カフェオレもおいしかったー

a0094449_08131976.jpg

さて、この朝、私はポケットにヴァセリンを忍ばせ食堂へ。食事を終え、靴を履く前にもう一度足首以下に塗るつもりでした。
ところが!部屋に戻ったら、ヴァセリンがない!何所を探してもない!

山の靴を履くときには、水ぶくれをつくらないよう、ヴァセリンなどをしっかり塗っておくといいのです、というか塗らないと大変!。アルベルゲの人も一緒に探してくれたけれど、みつからない。
すると、同じ部屋で寝泊まりをしたオーストラリア人のご夫婦が「うちは別のもあるから、これ、使いかけだけれど、どうぞ」と差し出してくれたのです。

そして、彼らとその日は一緒に歩くことになりました。

朝食の間に、なーんとなくみんなが親しくなります。年齢も様々だし、うわさで聞いていた「自転車でピレネー越え」という人もいたりと、歩く道は一緒だけど、みんながそれぞれ方法も目的も日数も違う。
こんな軽装で大丈夫なのかなあ、慣れているのかしら?
a0094449_08203074.jpg

でも、みんな体がしっかりしていて、慣れた感じ。
私はいかにも「新品」だらけの超初心者。
ストックを組み立てることすらできない!
あれあれ?お店ではできたのに~(涙)。オーストラリアからの夫婦アイダとアンソニーがクスクス笑いながら「ほら、やってあげるよ」と。
ウグっ。いい歳して、子供みたいなことになっています。

さあ、出発!
もう少し、この街を見ておきたかったなあ。少し早めに到着しておけばよかったのかなあ。でも、そうしたらアイダたちと一緒にはならなかったはず。
偶然を楽しもう、と思ったのです。
街を出たところの橋から街を振り返った図。遠くに、やはり今日出立する人たちの姿が見えます。
a0094449_08314026.jpg

街は川に囲まれていたようですね。
a0094449_08321111.jpg

道には、導きの白と赤の矢印が出ている。ということで、基本的には問題ないのですが、前日、アソシエーションでここだけは間違えないように!と言われた所を見逃さないように歩きます。
a0094449_08364246.jpg

歩きながら自己紹介。二人はそれぞれ親の世代からオーストラリアにやってきた、いわゆる移民2世なのだとか。アンソニーが長い有休をとることができる年なので、今年はここを歩き切ろうということになったらしい。todayがtodaiに聞こえるアンソニーのオージー英語は私にはハードルが高いものがありましたが、そこはアイダが「間(あいだ)」に立ってくれるという、シャレのような状態で2日間を共に歩いたのでした。

老親には「あっちへ行けば誰かと一緒に歩くことになる」と大見えを切って出かけたわけですが、「愛されタイプ」でもなし、声をかけたくなるような何かを持っているわけでもナシなワタクシ。そして、サンジャンに到着してから、予想以上に「カップル」やら「友達」やら「家族」でと二人以上で歩く人たちが多いことに気が付きました。
だから、自分から「ご一緒してもいいですか?」と言わないと、5日間、誰とも口をきかないことになるのかも!と思ったのです。
もちろん、一人で歩く、ということは大切だけど、たった5日間しか歩かないのに、一人っていうのも・・・。そして歩きなれた山道じゃなくて、初めての山歩きへの不安もあったりして。
このご夫妻だったらつかず離れずで行けそうかな?と思ったのでした。

雨が降る前にオリソンに到着しよう!と二人が必死に歩くので、私もおいていかれないように歩きます。お二人があまり写真を撮ろうとしないので、シャッターチャンスと思ったところを通り過ぎなくてはならない。私は写真を撮る時もドンくさいというか、ここを撮りたいと思う割には、「シャッターを切りたい」構図をみつけるのに少し時間がかかることもある(写真を撮るためにちょっと止まってもこれだけ離れてしまう!)。が、待たせるわけにはいきません。一人じゃないんだから、そこは妥協しなくちゃね。
という状況でしたので、一日目の写真はとっても少ない。
a0094449_08384087.jpg

あんまり歩幅を広げずに、リズムよく、前を見て・・・と歩いているうちに気が付きました。ストックがあるからか、人も少ないからか、大山の時のような疲労はありません。暑さも全然違うし。
後から来る人に抜かれたりすると、あー、アイダたち、ひょっとしたら、私と一緒に歩いているから、遅くなっていたりして・・・と思うのですが、よく見ると、アイダは割と遅れがち。大丈夫かなあ?アンソニーも膝の調子がよくなくて歩き始めが大変なのだとか。
そうこうするうちに、私は、彼らより息が上がっていないことに気が付きました。
「えー、東風はこんなに小さいのに、それにほぼ初めての山歩きだっていうのに、どうして息が上がってないの?」とアイダはびっくり。
「二人からもらったヴァセリンのおかげで足の調子はいいし、ほら、初日だからまだ疲れてないのよ。明日はどうなっているかわからない。もし明日歩けなかったら、タクシーでロンセスバジェスに行こうと思う」
「え?タクシーで?」
「だって、バスはオリソンの宿の近くになさそうだし」
「そんな2日目でタクシーだなんて」
「ピレネーは自分の足で越えたいから、ロンセスバジェスまではどうにか歩きたいと思ってるけど。今回、うちの老親と「無理をしない」と約束してきたのよねー。何かあっても、誰も迎えに来てくれないし。パンプローナでホテルを予約してあるから、ロンセスバジェスからバスでパンプローナに入るかも」

口先だけではなく、無理そうだったらタクシーを・・・と思っていたのです。大山ハイクで下山するまでのあの大変だった時のことを思い出すと、あれの繰り返しを一日に何度もするとしたら、心は張り切っていても身体はついていけないかもーと思ったのです。

でも、その一方で、特に母から「バス旅行でコンポステーラに行くツアーがあるんだから、それで10日ぐらい行ってきたらいいのに」と言われ続けたのを振り切って出国した以上は、どうにか歩き通したいという思いが一歩前に進むたびに強くなる。

しかも、こういう風景が見えるんだったら・・・。
a0094449_08491017.jpg
牛、羊、馬・・・。放牧されている風景に何かが解き放たれていく。時折振る尾っぽを見ていると、毎日の慌ただしさを払いのけてくれているような気持に。
子どもの頃に読んだ絵本を思い出す。花輪を作って頭に飾ってあげたくなった。

a0094449_08564684.jpg


ビルで視界が狭まることもない。サンジャンピエドポーが遠くになっていく。
a0094449_08495454.jpg
だんだんと雲がでてきました。

a0094449_08495447.jpg

このあたりから舗装されていない道を歩きます。
a0094449_08563623.jpg
ま、このあたりまではまだまだ歩きやすい道。
a0094449_09094627.jpg


しばらくすると、道も草よりは大きな石が目立つようになってくる。すると、すごい勢いで羊たちが降りてきた。
「ひつじのショーン」を思い出す。
a0094449_08565049.jpg



呑気さんもいます。
a0094449_09040306.jpg

通り過ぎる間、私たちは道の端に寄ってます。今回は平行して移動だったからよかったけれど、場合によっては横断されちゃって、しばらく「立ち尽くす」ほかない時もあるんだそうです。振り返ったら、犬をつれた登山客が。でも、犬はおとなしく主人のそばを歩くだけ。羊たちは、ダーッと曲がっていきました。
a0094449_09035543.jpg

砂利道の途中にこういう風景が。石を積んであるのは、ここで休む人がいるからなのか。誰か亡くなったひとがいるからなのか。
a0094449_09033939.jpg

結構上まで上がってきたのかも。山の尾根が美しい。
a0094449_09163736.jpg
再び舗装された道が・・・。こうやって道を示す石があるんですね。
a0094449_09164220.jpg


アイダが驚いていたように、むしろ私のほうが、元気なままで今日のお宿に到着。とはいえ、到着した時はそれなりにバテていたので後から撮った写真。宿泊場所はこの建物の裏。素敵な石造りの建物はカフェです。よくガイドブックには人が座って食事をしているシーンが出ていますが、雨になるとそういうわけにはいきません(笑)。
a0094449_09190750.jpg

すぐに部屋に入れるのかなーと思ったけれど、11時過ぎまではダメとのこと。その間、ホットチョコレートを飲んで待ってます。
a0094449_09225179.jpg

あー、寒かったねー、と知らない人同士でも声をかけあう。ここはカフェも兼ねているので、これから何時間もかけてロンセスバジェスまで行く人もいる。
a0094449_09230004.jpg
自転車の人たちもやってきては、温まって、また走り始める。あ、朝、見送った彼も!
「自転車の人って荷物が少ないですよねー」
「もう明日であきらめそう。雨でびちょびちょ。」
見たら薄いジャケットしか着てない。レインコート持ってないの?
「だって、この数日、スゲー暑かったしさ」
本当に薄着で、このあとどうするのかしら・・・。明日も雨なのかしら?

[PR]
トラックバックURL : http://ew335.exblog.jp/tb/237873483
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
by eastwind-335 | 2017-10-15 09:26 | 旅の思い出17ヤコブの道 | Trackback | Comments(0)

東風のささやかな毎日のささやかな記録


by eastwind-335
プロフィールを見る