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どこまでが「事実」なのか

私は出勤時は電車に座ると新聞を広げ(30分もあればとりあえず読み終わる)、帰宅時には本を読みます。どちらにしてもたいていの場合「座って通勤できる」環境にあるからです。帰りは部活帰りの高校生や大学生と一緒になったりすると座れないけれど、立って本を読むことはできるぐらいの混み方なので、片手でつり革を時折にぎりながら、本を読んでいます。

その本というのも、以前から時折書いていますが、「最近の日本の小説」は全く縁遠くて・・・。
読まなくちゃなー、と思いつつ、どうしても翻訳小説のほうが優先になってしまう。

ある時、本好きのお兄さんと一緒に帰った時に、その問題を相談したところ、「読書に自分の人生体験にはないことを求めるタイプと、自己肯定を求めるタイプとがいる、と思う」と言い出しました。
お兄さんは、同世代の作家の作品に共感して安心するだけに終われないんだそうですよ。
お兄さん曰く、私もそのクチだと思う、とのこと。知らなかった!ということが一つでもあると面白かったというのは確かですねー。

たぶん、日本が舞台の小説は、私の職場自体がルーティンが基本のくせに「刺激的」な日々なので、ちょっとやそっとのことでは共感だの自己肯定という感情に至らないのでしょう。たぶん。
だから、翻訳小説に行っちゃうんだろうな、私。

さてさて、この2か月、チミチミとですが読んでいるのが、ネレ・ノイハウスの小説。フランクフルト近郊の「タウヌス」地方を舞台にした警察小説。翻訳が出ていることは数年前から知っていたのだけど、北欧ミステリーの続きみたいな扱いというか、非英語圏ミステリーにありがちな「広告臭プンプン」(言い換えれば「突然すぎる」)な宣伝の仕方が気になって、手に取ることはしなかったのでした。

「広告臭プンプン」には一度ひっかかったことがあって・・・。私は、日本における翻訳ドイツミステリーの先駆けであるベルンハルト・シュリンクの作品が合わなかったのです。合わなかった、というのは訳が合わなかった、ではなく、訳が良すぎて読み込みすぎて、挙句、シュリンクの書く男性・女性像、特に男性像に「え?」という反発を覚えたというか。
特に『朗読者』は、高校生のころに源氏物語を読んだときと同じ感覚。

人生が浅いので、共感できないんでしょうけれど。かといって、「そうなの!」という驚きは少なくて。なんか、ウソくさいなー、って。
シュリンクの作品は「ナチス」抜きには成立しないものばかりなのだけど、そして、それはドイツの現実なのかもしれないけれど、でも、「ナチス抜き」だったらこの作品って・・・?って思わせちゃうような構造のように思えたのです。

しかし、久しぶりに寄ったブックオフで、たまたま手に取ったのがノイハウスの本。
それも、彼女の本の翻訳はなぜか第1作からではなく第3作からでたそう。私が手に取ったのが第1作にあたる作品。隣に並んでいるのが第2作。2冊買っても、本屋で定価で買う1冊分に相当する程度だったので、とりあえず2作目まで読んでみよう、と思ったのでした。

私はできれば、シリーズものは第1作から読みたい、見たいタイプですので。ミステリーっていうのは、シリーズになればなるほど、途中からっていうのは、解説者あとがきを読むよりもタチが悪いと思っています。シリーズものっていうのは原則時系列順であり、人の成長(?)がわかるでしょう?

ということで、読み始めた『悪女は自殺しない』。設定が2005年。家人がドイツへの長期出張の打診を受けたころだなー、とか、このころの私は~なんて思いながらページをめくるうちにドンドンとのめり込む。
ナチではないドイツの歴史を組み込んだ警察小説。
その時々のタイムリーな内容を(タイムリーといっても、NHK衛星放送の国際ニュースやドキュメンタリーで知っている、という程度のことですが)思い出す事件。事実と「ありうるかも」がうまく織り込まれていると思います。

一気に読み上げるのではなく、チミチミ、がっつり読むという感じで、いま3作目の途中。
この数年の私のフランクフルトでの定点観察ってここにつながるんだ!という話が出てきて、次のページをめくるたびにワクワク。
昨日もブックオフで第4作を買いました。40代最後に読み、50代最初に読む小説になるのかな。

この小説と平行して読んでいるのがジョン・トービーの『パスポートの発明』(法政大学出版局)。へえ、そうなんだ!という驚き、この夏に訪れたフランスのパスポートの歴史から始まるのですが、同じ時期にフランスの地方都市に出張中だったお兄さんから伺ったばかり地名などが出てきて、これもまた「ほほう!」と。

一方で、のめり込みたくなるような日本人作家に巡り合いたい、と思うこの頃です。

by eastwind-335 | 2017-09-22 07:20 | Books | Trackback | Comments(0)

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