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私の文庫本第一号

最近、すっかり、地上波を観なくなってしまったこともあり、新聞のテレビ欄はザザーっと眺める程度。
先週の土曜日は出勤だったこともあり、新聞も斜め読み。

昨日は家人の家の墓参りに行くことになり、道中の電車の中で新聞を広げていてびっくり。番組解説欄に「悦ちゃん」という名前と、かんたんなあらすじが。

えー?獅子文六の『悦ちゃん』がドラマ化されたの?!
この数年、獅子文六の作品が文庫本化されていて、意外に思っていたのだけど。

実は、私が生まれて初めて所有した文庫本がこの『悦ちゃん』。この本との出会いは、小学校6年生までさかのぼります。欠席した同級生の家に教師から頼まれたプリントを届けに行った時、知ったのでした。お見舞いにいったはずなのに、そこのお宅に揃っていた「少年少女文学全集」に目が行ってしまい(おいおい)、その中で唯一しらないタイトルがこの『悦ちゃん』だったのでした。そこのお母さんが「○○は読まないから、どーぞ、東風ちゃん、読んで頂戴」と貸してくださり・・・。

母が「獅子文六なんて懐かしいわね」と、母が娘時代に流行っていた流行作家であったことや、朝ドラの原作になった本があるだの、作家の背景を教えてくれたのでした。6年生の時は、社会科は歴史を学ぶ時で、年表を作るのが1年間の課題だったので、さっそくこの悦ちゃんから「円本」だの「タクシー」だの「ラジオ」だの「疫痢」だの、と「戦争前の文化」にいろんな言葉を書き込んだのでした。
江戸っ子だから寿司とてんぷらが好き、といった表現から、私は東京の子じゃないけれど、寿司もてんぷらも好きなんだけどなー、と思ったり。

あー、この本からいろんなことを勉強しました!
銘仙だの、丸ビルだのと、わからないコトバは両親に尋ねまくったなー。今と違って丸ビルは古い古いビルになっていたころでした、
横浜より北上することはほとんどない頃だったので、「丸ビル」という言葉に惹かれるものがあり・・・。
私が丸ビルに出入りするようになったのは、大学4年生になってから。ドイツ語の本を扱う書店が丸ビルに入っていたので、覗きに行くようになりました。といっても、背表紙のドイツ語の意味すらわからず、眺めているだけでしたけれど。

私は小学校を卒業した数日後に海辺の街に引っ越しました。初等教育から中等教育へとただでさえスタートが大変なのに、誰一人知らない学校へ行くのですから、最初の数か月、馴染めないことが続きました。特に辛かったのが、「本を読む=真面目」と揶揄られることだったのでした。学校の図書室へ行けば司書さんが親切にしてくれる分、悪目立ちをしてしまい「東風さんはいい子ぶっている」と不良ぶっている人たちから後ろ指をさされたり。市の図書館は当時1館しかなくて(!)、家からそこへ行くにはバスに乗って行かねばならない。月に1000円の小遣いの子供がバス(いきなり大人料金になりますしね)代を出すわけにもいかず。駅前の本屋も非常に充実していなくて、だいたい制服姿の子が一人で入店すれば「なんですか!?」と店員が寄ってくる。

そんなある日、『悦ちゃん』が文庫本化されていることを知ったのでした。
でも、海辺の街の本屋にはない。

父がある週末、渋谷に出かけるというので、「渋谷の大盛堂書店で買ってきて!」とお願いしたのでした。
私が所有する文庫本第一号でした。(ちなみに第2号は星新一の『ボッコちゃん』
あまりにうれしくて、大盛堂の紙カバーもそのままで、まだ持っています。
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あのころ、とっても「大人ぶって」みたくって、母からつけペン式の万年筆を借りて、カバーにタイトルや買った日を書いたのでした。
文六の文の字、はらいが気に入らなかったのかしら。なんかゴチャゴチャに書き足していますね。いまはもうこういう字を書かなくなりましたが、中学の時は「周りから浮かないように」と字だけはこういう字にしておいたのだった。
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でも心底「丸文字」な性格じゃないから、苦心してたなあ、ってあの頃を思い出しました。

あんまりうれしくて買ってもらった日もちゃんと書いておきました。
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昭和55年って・・・1980年かあ。もうこういう数字の書き方もしないなあー。
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35年以上経ってますので、もう紙はすっかり茶けてしまっていますが、お嫁入り道具だし、引っ越しの時には大切に箱にしまいましたよ!
たぶん、棺桶にも入れてもらうことになるでしょう。甥っ子くんに頼んでおかねば(笑)。

HPを見たところ、えーっと、まあ、いまだったらそういうものなのかな?と思いつつも、ユースケ・サンタマリアは線が細すぎるし、いいトコの「呑気な弟気質」もどう演じるのかしら?

原作は、いまは、ちくま文庫に入っているのですね。私のは写真にあるように角川文庫。

先日、誰の文章だったかしら、中学生になったら背伸びをして文庫本を手に取るようになった。文庫本は大人の証だった、って書いてある新聞のインタビューを読み、うんうん、とうなづいてしまいました。単行本が文庫本になるまで待つのも楽しかったなあ。

中学校で本の話ができる友達はいなくて、毎月、先生に出さなくてはいけない読書カードには「これは小学生が読む児童文学全集に入ってるんだから、書けない」と自主規制をかけて。この本の話をしたのは、両親以外だと母方の叔母。叔母曰く「本は読んだことはないけれど、ドラマは見た」と。ミネラル麦茶のCMに出ていた女優さんが子役時代で悦ちゃんを演じていた、と。

私にとっては初めてのドラマ化だから、見てみたい気はするんですけどねー。でも、イメージがあるからなあー。

そして、ちょっと考えちゃう。この小説は昭和のはじめの東京を描いたもの。いわゆるモダニズム文学。この話には描かれなかった「執筆をしている時の」時代は・・・?こういう明るい小説を書かなくちゃやってられないって時代だったわけで・・・。なんだか、なんだか、ひっかかる。いま、なぜ、この小説を、時代背景を替えずにドラマ化するのかを。


Commented by ぷるぷる at 2017-07-24 20:56 x
お久しぶりに書きこみさせていただきます。
懐かしい、悦ちゃん。読書家の父の本棚で見つけて思わず手に取ったのは中学? 六年生? タイトルも右から左に読む…かなり古いものだったのか・・・・。知らない単語、特に覚えているのが「~給へ」という語尾。へー聞いたことないや,なんて思いながら一気に読んだのを覚えています。昔NHKでもドラマ化していましたよ。(今調べたら1974年でした。)
悦ちゃん役の人は覚えていませんが、碌さん役が沼田爆さんという俳優さんで原作のイメージに合ってるなぁ、と子供心に思ってました。大好きな本だった。嫁入に持ってきたはずなんだけど今探しても見当たらなかった・・・・。
転校慣れして適当に人と合しつつ、でもほんとは自分一人で行動するのが好きで学校の図書館通いしていたあの頃を思い出します・・

Commented by olive at 2017-07-25 14:54 x
お久しぶりです。
獅子文禄の「悦ちゃん」は物心ついたときには姉の本棚にありました。面白かったので何度も読みました。

ユースケサンタマリアさんが碌さんというのは、原作のイメージからしっくり来ないです。ぷるぷるさんが、以前のドラマ化では碌さんは沼田爆さんだったとコメントされていますが、わたしとしてもそちらの方が適役かなと感じます。

東風さんとは子供のころの読書の趣味がよく重なるので、なんとなくうれしいです。(^^)
Commented by eastwind-335 at 2017-08-07 12:42
ぷるぷるさん、こんにちは。
お返事遅くなりました。
お父様の蔵書にもあったのですね。昭和な本ですものね。
同じ本を同じ学齢の頃に楽しんだお仲間が見つかり嬉しいです。
74年のドラマは見てないのです。残念!父娘のキャスティング、大切ですよね〜。
今のは先日5分間ダイジェストでみました。どんなに頑張ってもテーストは平成でしたね。
Commented by eastwind-335 at 2017-08-07 12:58
Olive さん、こんにちは。お返事遅くなりました。
ようやく5分間ダイジェストでちらっと見ましたが、なんだか〜でしたね。もう少し大人のキャスティングを考えてくれないと。
悦ちゃんも自分の頭の中の子とちがって(笑)、思い入れの強い小説のドラマはつい辛口になっちゃう、と思います。
というか、NHKが妙に視聴率狙いのドラマを作ろうと、民放みたいな俳優ありきのドラマに必死すぎで、原作の世界観を活かすとか、子供向きの良心のある質のものを作れなくなった、ということかなぁ、と思いました。
多分、製作側、子供時代に原作を読んでないはず。

by eastwind-335 | 2017-07-23 17:35 | テレビ | Trackback | Comments(4)

東風のささやかな毎日のささやかな記録


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