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大いなる修行へ

1年以上ぶりに映画館で映画を見てきました!5時にタイムカードを押して、神保町に着いたのは50分後。
大いなる修行へ_a0094449_235435.jpg神保町も久しぶり!なんか交差点のあたり変わっちゃった気がするのは、ずいぶん久しぶりだからかしら?
立秋を迎えたからか、空が秋の色、雲の形になってきたと思うこの頃。
今年は入道雲、見なかったなあ・・・。

岩波ホールで公開中の「大いなる沈黙へ」です。
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フランスアルプスにあるカルトジオ修道会グランシャルトルーズド修道院の四季を追ったドキュメンタリー。
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この映画の評判は新聞他で目にしていたのですが、珍しく映画館まで行こうという気持ちになったのは、7月下旬にドイツ文化会館で行われた、世界遺産についての勉強会に参加したことがきっかけ。
代表優勝お祝いのイベントがあるかも~という期待を持ってHPをチェックしたら、6月のコルヴァイ修道院の世界遺産追加を記念した講演会がある、と。参加者には世界遺産に関する単語表を差し上げます、とあったので、ワタクシはてっきり「ドイツ語で講演としたら同時通訳が付くんだろうな」と、確認もせず(←これはいつものこと)、直前に申し込みをしました。
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始まる前にはワインとともにちょっとしたパンも出て、カルテスエッセン状態!
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大いなる修行へ_a0094449_23141954.jpgとっても美味しゅうございました!

が、お酒が弱い私、話を聞き始めたら「良い気分~」となり(汗)、目を覚ましているのが大変でした。
しかも、講演は観光局でインターンらしき若いドイツ人女性たち。わかりやすいドイツ語だったと思うのですが、頭の中は「ワイン」でぐるんぐるんなワタクシ。ついて行けなかった・・・(とほ)。
それだけでなーく!一番聴きたかったコルヴァイ修道院についてはサラッと・・・というイメージが。まだ決まったばかりで、日本のドイツ観光局としても「これから」のところらしい。
だからこそ、一足先に知りたいと思って来たんですけどね~。

でも、そこで、久しぶりに「シトー派のマウルブロン修道院」の話を聞いているうちに、そうだ!「修道士ファルコ」を読み直してみようかしら?なんて思うようになり、更に出口では、「大いなる沈黙へ」の紹介も置いてあったりして・・・。

単純なワタクシは「いま、私は修道院に呼ばれてる」と思ったのでした。

ワタクシ自身はプロテスタント教会のほうが馴染みがあるのですが、実は、聖公会の修道会で二日ほど過ごしたことがあるので、その時のことを思い出したくもなりました。
クリスチャンの先輩に映画のことを話したら、「あれ、3時間らしいよ!」と。
信者さんですら意気込んで見に行ったのに起きていられない方たちもいるんだとか!静かな映画なので、この日も寝息はもちろん軽いいびきが聞こえたり。首が左右とか上下になってる人も結構いました。

結果から言えば、私もウトウト。
寝入ってしまった、ということはなかったのですが、人の顔が大写しの時に、ふと目を閉じて、開いたら違う人の顔になっていたことがしばしば。

でも、ほとんどちゃんと見られたと思う。
ただ、カトリックのことはプロテスタント以上によくわからないので、え?え?これは今の行為は何?どんな意味があるの?と考えたら、すぐに次の場面になっていることもあって・・・。

しかし、このドキュメンタリー映画は、余計な音は点けない等々の修道会側の希望もあり、解説なしに淡々と日々が描かれていくもの。キリスト教に縁のない人間にはやや修行を必要とする映画になっているのは否めません。
登場人物はそれほど多くないのですが、ほとんどの人たちの名前がわからないので、修道会での役割を把握してないと、髪型が一緒の人たちですので(要するに剃髪中、もしくは自然に剃髪中)、耳の形で区別、とかしているうちに、「あれ?あれ?」となってしまい、一度瞬きしただけと思い込んでいた(つまり一瞬記憶が飛ぶ)間に違う人の顔が出てしまい、さっきの人と何の関係があるのかなあ、とかちょっとでも考えちゃうと、そのあとも容赦なく説明なく流れていく映像に取り残されてしまうのです。
単に映像が美しいということだけで満足できる人にはいいけれど、あらかじめパンフレットを読んでおくほうがいいかも、って思いました。映画を見終わってからですが、私の場合は、パンフレットを読んで疑問の3分の1は解決できました!

3時間という時間が取れるのだったら、映画館で絶対に一度は見たほうが良いと思う。映像は本当に美しいし修道院という奥行のある生活空間を描いています。でも私は1度であの映画を堪能できないと思うから、DVDになってほしいとも思っていますけれども。
大いなる修行へ_a0094449_8252833.jpgこちらが監督。私よりは年長ですが、同世代。映画を撮ろうと思ったのはまだ20代半ばの時。修道院から「まだ準備ができていない」と断られたものの、申し込んで16年経った時に修道院から「まだ撮りたいと思っているのだったら」と許可が出て、2005年に完成。

撮影されてから10年近く経って、ようやく日本でも見ることができたということは、今日初めて知りました。
いや、ほんと良い映画でしたよ。
修道会というのはどこでも沈黙の時間が重要。私が体験した聖公会の女子修道院での二日でも、シスターから「大沈黙だけは守ってください」とお願いされました。
口を閉ざすことは簡単。でも、その時思いました。沈黙への備えがない限り、耐えられなくなる人がいるだろうと。沈黙によって言葉を育むこともできるけれど、人によっては、鋭さを越した痛みを与えるような言葉へと時が言葉を武装化させてしまうというか・・・。
何かしながらではなく、手を止めてひたすら祈る、グランド・シャルトルーズでの一日、四季のなかで、だからこそ修道士が発する言葉に、修道士が選ぶ聖書の句に、映像として私たちの目の前には現れないこの修道会での生活のありかたが見えてくるのだろうなと思ったり。

この修道会は個室での生活が原則で、だからこそ、時折揃って食事をすることにより、共に食することの意味があることを示し、沈黙を解かれる時間に子供のように語り、笑い、雪山を歩き、橇に乗ったように滑り、スケボーをしているように滑り、再び、沈黙の生活へと戻っていく。
二日間の滞在によって、修道院は俗世とは違う空間であるけれど、俗世にあるものがないのではなく、俗世にないものがあるんだと思ったものですが、この映画で久しぶりにそのことを思い出しました。

ほんと、3時間は修行だったけど、また見たい。それから、パンフレットは必携!
久しぶりにカトリック作家である加賀乙彦さんの文章にも触れることができて(大学生の時にW(三浦・曽野)綾子後に一時のめり込んでまとめ読みしたのであった!)、また、監督のインタビューも示唆に富み、読み損のないパンフレットでした。ま、岩波ホールで作るものだから、間違いないのは、間違いないのですけれど・・・。

それから、私と同世代かそれ以上の方々には懐かしいNHKのプロデューサーだった「佐々木昭一郎」さんの新作映像作品が10月から岩波ホールで上映されることも知りました!「ミンヨン 倍音の法則」。
「四季・ユートピアノ」「川の流れはバイオリンの音」は小学生から中学生になるころ、本当に印象深く見たドラマでした。ドキュメンタリーのようなドラマのような・・・。
あの頃のNHKは、いまみたいに「やれ不倫」「やれ恋愛」「やれ48人」「やれメディアミックス」みたいな感じじゃなかった。必ず佐々木ドラマのように、実験性の高い、リアルな、一方で小説を読んでいるような、小説を読みながら頭に浮かぶ絵が繋がって動き出すような、まるで誰かの旅の話を聞いているような、そういう作品群があったわけです。
登場人物が全員「素人」だということから生まれる堅苦しさすら、自然というか「作られてない」感じというか。だから逆にドキュメンタリーだと思っていたほど。
記憶違いかもしれませんが、佐々木ドラマは主人公は日本語のセリフで推し進め、旅先の外国人たちはそれぞれの母語(字幕が付いた)で応答していたはず。私は「どうやってこの人たちは意思を疎通させているのかしら?」と思い、一緒に見ていた両親に尋ねたら、父親がひとこと「ドラマだから」と。
しかし、その後、私も一人旅をするようになって、つい日本語でボソっと発した言葉を理解したわけでもないのに対応してくれる人とすれ違うこともあったりして、非日常性の高いドラマだけど、どこかで「起こりうる」ことだと今にして思うこともあって。
すごく懐かしい!予告も見ましたが、佐々木ワールド全開です!テーマも今のNHKだったら絶対に描けない内容かも。

楽しみです!
by eastwind-335 | 2014-08-09 09:58 | 映画 | Trackback | Comments(0)

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