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日本は便利だけど

海外旅行に行って、見たかった絵が「ただいま日本に貸し出し中です」という経験をなさった方もいらっしゃると思います。それぐらい、日本は世界各国の美術館展が日常的に行われています。
その一つ、「ベルリン国立美術館展」に行ってきました。
「お金払って、人をみた」って感じ。
前売り買ったし、金曜は職場が休業日になったので。まず午前中に2か月に1度のお楽しみ、韓国料理教室に伺い、2時過ぎに失礼して、用事をすませ、3時過ぎに上野到着。

以下、「ベルリン国立美術館展」よかった~053.gifな方には、怒られる文章ですが、あんまりにもびっくりしたので書いておきます。

先発隊の両親からいろいろ聞かされていたので、覚悟してたけど、残念。西洋美術館には、ベルリンのキャラクターやシュタイフ(あの恰好であの値段?涙)を使った「かわいい~」グッズなんかで金儲けしないで、展示を見た人たちを満足させて収益を得てもらいたい。特別展が見やすい新新館を建ててほしい。欧米各国の美術館の展示がどうなっているのか、基本の「き」をもう一度勉強してもらいたい。
六本木の新国立美術館がつくづく恨めしい。あの天井の高さ、ムダな広さ、明るさがあったらどれだけのことができるか!

午後3時に入場し、ひゃー、バーゲン会場ですか?みたいな状態に、特別展は一通り見て40分余りで逃げ出しました。

つい2週間前、所蔵館にいただけに、あまりの違いにクラクラ。

あの面積にあれだけの作品数は異常じゃなかろうか、と。
西洋美術史のお勉強になりました、と美術館ではしたかったそうですが、うーんうーんうーん・・・。
中学時代の副教科の試験勉強みたいだった。試験前にまとめて要点を「とりあえず観た」って感じ。作品に向き合う、感動するなんて、私にはできなかった。

いや、副教科だって、私は美術や音楽は結構マジメに勉強したのであった!数学よりは真面目に取り組んでたよ!

あの展示は、フェルメールが来なかったら、もっとゆったりとみられたのかな~。いえね、フェルメールまではみんな真剣に見るんですよ。それが、そこを終えると、急にスイスイ行くというか、混まないというか・・・。不思議だな~というか、哀しいな~というか。
フェルメールなんて、1973年来日のパンダ「カンカン・ランラン」状態でしたよ!(幼稚園で見に行った私)
最前列は歩いて通過してください!ゆっくり見たい人は2列目以降にという係員の声。(1974年は「幼稚園生、小学生は最前列で、大人は2列目で。大人は止まっちゃいけません!」でしたけど。なんでそんなこと覚えているかというと、付添のお母さんたちと離ればなれになっちゃうのでは?と子供心に思ったからデス)
東日本の人たちは並べと言われば並ぶと思ったのですが、アラ「団塊」は違うんだなー。オバ「団塊」なんて「私は小さいから」といって前に抜け駆けしようとする人もいるし。日本に地方差行動はもうなくなったのかな~。

1992年だったかな東博でやった「日本国宝展」で源氏物語絵巻を見たときには、係員がほんと、誘導して止まらせなかったけれど、いまそれをやったら独法化の下にある西洋美術館は苦情対応で仕事どころじゃなくなるってことなのかな。
(ちなみに、今回の苦情は「館内が寒い!」だそうです。そのことについてのお断りの紙が貼ってありました。図書館と美術館と博物館、つまり「文化三館」は湿度管理が重要なので、除湿のために寒いんですよね~。でも、ブリュッセルのそれよりはずっと楽勝でしたよ!)

聞くところによれば「フェルメールは1点だけなのか?詐欺じゃないか!」と係員に確認する人もいるみたいだし。

私は美術館でその展示のなかで一番好きな作品、とか、新しく知った作家を見つけ、それを鑑賞の思い出にしています。ゆっくり見られなかったなかで、リーメンシュナイダーが数点出ていて、嬉しかったです。でも、誰も「わー、リーメンシュナイダーだ」とは言わないで見てるし、割とあっさり通過する人が多くて。もったいないなー。彼のドイツ美術史の中での功績を紹介する文章をつけるとかしたらいいのにね!あ、図録を買え、ですかね(笑)。
小品ながらよい作品だったのに、天然光のところで見ることができないのが残念でした。
これじゃ、ますます「ドイツの美術は暗い」と思われちゃうわ。
でも、ドイツではもっと明るいところに展示してる。そこで感じる陰影の良さが彼の作品群にあると思うのだけど(個人的見解です)。
美術品の保護のため、という名目はわからなくもないけれど、あの暗さはなんだろう。人がたくさんで暗い部屋。

しかし、本当に作品を見たい、という人に対して、あれは失礼じゃないのか、と思うほどの人混み。
ボルゲーゼ美術館みたいに、時間・人数制限をして見せたほうがいいと思う。そういう取組はできないのかな。世界遺産登録の前に外ヅラだけでなく中身の充実を!だと思いました。

そうそう、中身の充実を、という点では、まだまだ解説が足りないような。
第五章 一八世紀:啓蒙の近代へ の部屋に並ぶ「死んだ雉と獲物袋」とか「死んだ鳥のいる静物」とかいわゆるよくあるテーマの作品を見ていたおばさまたちが「どーして、こんな絵がこの展覧会に必要なのかしら~」「ねー、ねー」「気持ち悪いわよねー」と口ぐちにおっしゃっておりました。

気持ち悪い、ね・・・。HPの解説にはこう書いてあります。

フランス革命の直前に描かれたジャン=バティスト・シャルダンの作品《死んだ雉と獲物袋》 [画像1] です。狩をモチーフにした静物画。狩人のものであろうバッグが下においてあり、その上に撃ち捕られたキジの姿が見ることができます。18世紀のこうした静物画は道徳的な意味を持っていました。キジは快楽と誇りを表しています。画家の才能を存分に発揮したひとつの名作ともいえます。


この文章のおかげで、ヨーロッパの美術館でこの手の静物画はつきものなので違和感はなかった私も「啓蒙の近代とあの手の絵画を結びつける」という新しい知見を得ることができました。ふむふむ、日本の美術教育だけじゃ理解できないはず。エビの道徳的な意味は?とか私も疑問に思いましたもん。だから図録を買いなさい、なのでしょうか・・・。

日本人は静物画といえばセザンヌという教科書的知識のはずなので、やっぱり、そういうところにこそ解説を、じゃないのかなあ。歴代の館長はトーダイの偉い美術史の先生ばっかりで、自分たちの教え子レベルで解説をつけてるんじゃないのかな?と思いました。集客するんだったら教育もしてほしいですわ~。

人混みから抜け出して観た常設展の特別展「クラインマイスター:16世紀前半ドイツにおける小画面の版画家たち」のほうがずーっとよかったなあ~。人がいなくてゆっくり見えたのもよかったし!西洋美術館は素描とか版画のいい所蔵品があるので大好きです。
個人的には、実物はやっぱり見たほうがいいと思うし。色とか光り方とか、どんなにデジカメが改良されても、自分の目から得られるものにはかないません。
だからこそ、そして、国を代表する美術館だと自負したいのだったらなおのこと、特別展をどうにかしてもらいたいなあ~と。

繰り返し言いますが、大勢の観客数が見込まれるとあらかじめ分かっているにもかかわらず、あの面積にあの作品数、は人間工学的におかしいと思う。青柳センセー、あれでいいんですか?美意識に適ってます?
もし自分が画家だったら、ああいう風に自分の作品を見てもらいたいですか?
by eastwind-335 | 2012-09-08 10:55 | 日常 | Trackback | Comments(0)

東風のささやかな毎日のささやかな記録


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